2017 Fiscal Year Research-status Report
全て酸化物からなる新規ワイドバンドギャップヘテロpn接合作製のための基盤技術開発
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17K05042
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Research Institution | Ishinomaki Senshu University |
Principal Investigator |
中込 真二 石巻専修大学, 理工学部, 教授 (60172285)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 隆 石巻専修大学, 理工学部, 教授 (90182336)
矢野 浩司 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (90252014)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 酸化ガリウム / 酸化ニッケル / 結晶配向性 / ヘテロ構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
NiOとβ-Ga2O3の間の結晶配向関係を明らかにする目的に関しては、まず29年度の計画通りに3種類の(100),(111),(110) MgO基板上に形成したβ-Ga2O3薄膜の結晶配向性について明らかにした。(100)MgO基板上ではβ-Ga2O3 (100)[001]と MgO (100)[011] が平行な90°ずつ回転したドメインを確認し、新たに研究した(111)MgO基板上では(-201)配向Ga2O3が120°ずつ回転したドメインとなること、(110) MgO基板上では(-102)配向Ga2O3が180°回転したドメインとなることが分かった。この内容は学会誌に論文発表した。 一方、β-Ga2O3を基板としてNiOを形成した場合については、計画に基づいて新たに(-201)及び(010)β-Ga2O3基板上のNiOの結晶配向性を調べた。その結果、(-201)β-Ga2O3基板には(111)配向NiO、(010)β-Ga2O3基板には(0-11)配向NiOが形成され、基板方位が異なってもNiO [011](100)とβ-Ga2O3 [001](100)が平行な同じ位置関係でNiO配向膜が形成されていることが分かった。この結果は第65回応用物理学会において報告した。 NiOとβ-Ga2O3に基づくヘテロpn接合ダイオードについては、試作したダイオードの電流-電圧特性評価を行っている。約290 nmに最大感度をもつフォトダイオードとして機能すること、接合部での光吸収により電子正孔対を生成する比較的良好なpn接合ができていることが分かった。この結果は第65回応用物理学会において報告した。 研究分担者の矢野は、NiOとβ-Ga2O3からなるヘテロpn接合ダイオードの単純なモデルによるシミュレーションを開始した。電流-電圧特性の測定結果と比較することを始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NiOと同じ結晶構造で格子定数も近いMgO基板を使い、3種類の(100),(111),(110)面上に形成したβ-Ga2O3薄膜の結晶配向性について明らかにし、その結果を論文発表した。過去に中国のグループが同様の試みについて論文発表しているが、 本研究では、(111)基板上で6ドメインから3ドメインに減少した結果を、(110)基板上では従来と90°異なる結果となり、我々の結果の妥当性も示した。 一方、β-Ga2O3基板上のNiO薄膜については既に報告済みの(100)面上の場合に加えて、(-201),(010)面上のNiOの結晶配向性をX線回折測定により調べて応用物理学会で発表した。さらに研究を継続している。 NiOの疑似基板であるMgO基板上のβ-Ga2O3の結晶配向、β-Ga2O3基板上のNiOの結晶配向、この両者が明らかになったことは、本研究課題の結晶配向に関する部分が概ね達成しつつあると言え、今後のヘテロpn接合ダイオードの試作の基礎を与える結果となった。しかし、成膜技術の向上など改善しなければならない課題は残されている。 n形β-Ga2O3基板上にp形NiO薄膜を形成したダイオードについては、今後重点的に進める計画である。一部試作を開始したダイオードの電流-電圧特性はまだばらつきが大きく、ダイオードの直列抵抗成分が大きい。試作工程を見直しながら条件を見極めていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
β-Ga2O3基板上のNiO薄膜については、論文投稿する計画である。結晶配向に関する部分は概ね計画どおり進捗している。一方、ヘテロpn接合ダイオードについては試作条件の検討を行いながら、試作、評価、検討を繰り返し行っていく。検討の際には、シミュレーションから得られる電流-電圧特性と比較することで、どのようなパラメータが特性に影響を持っているか、あるいは実際のダイオードの何が影響してそのような特性になっているのかを考えながら検討を進める計画である。
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Causes of Carryover |
研究協力者との打ち合わせの回数が当初計画よりも少なくなったことでその費用が減額となった。また、外部委託の分析費用の若干の減額があったことなどが理由である。 当初の30年度研究費に充当して、研究消耗品等に使用する。
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