2017 Fiscal Year Research-status Report
単結晶グラフェン成長のための再利用可能なイリジウム/サファイア基板の開発
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17K05043
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
黄 晋二 青山学院大学, 理工学部, 教授 (50323663)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | グラフェン / CVD成長 / イリジウム |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、本研究の主要な実験を行うためのイリジウム下地専用熱CVD装置を導入した。本装置を導入したことによって、銅等の他の基板材料からのコンタミネーションを防ぐことができたため、実験の効率化を達成することができた。本装置を用いて、本研究の主たる目的である「イリジウム/サファイア基板を用いた複数回にわたる成長・転写における基板再利用性の実証」について詳細な実験を進め、以下のような結果を得た。(1)イリジウム下地への炭素の固溶:イリジウムの炭素固溶度は比較的低いことが知られているが、銅よりも1桁大きい炭素固溶度を持つため、CVD成長中に炭素がイリジウム中に固溶することが分かった。(2)固溶した炭素の析出:1回目のCVD成長においてイリジウム下地に固溶した炭素が、2回目以降のCVD成長において析出し、多数の2層グラフェン島を形成することが分かった。(3)固溶した炭素の拡散による表面モルフォロジーの変化:イリジウム中に固溶した炭素原子の拡散によって、イリジウム表面のモルフォロジーが変化していくことが分かった。(4)炭素固溶の制御:イリジウム中への炭素固溶を低減するために、成長時間を短くすること、あらかじめ成長温度以上の温度で基板に熱処理を施すことが有効であることが分かった。以上の研究成果を応用物理学会において報告した。 併せて、CVDグラフェンのデバイス応用についても研究を進め、グラフェン透明アンテナの作製と評価、希土類錯体を吸着させた発光性グラフェンの作製、グラフェン電極を用いた電気化学発光について成果を得ており、これらについても学会発表、及び論文投稿を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載したように、イリジウム下地専用の熱CVD装置を導入したことで、銅のコンタミネーションの問題を解決することができ、イリジウム上のグラフェン成長の本質的な現象を抽出する実験環境が整った。また、イリジウム上のグラフェン熱CVD成長における成長様式の理解が進み、かつ、同一のイリジウム/サファイア基板を用いた複数回の成長と転写を実現するために克服すべき課題として、イリジウム下地への炭素固溶の制御が重要であることが分かった。併せて、複数回の成長におけるイリジウムの表面モルフォロジー変化を詳細に観察する技術を確立することができ、複数回成長を実現するための成長条件最適化を進める実験の基礎を固めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度に得た結果から、イリジウム下地への炭素固溶と拡散がイリジウム膜の欠陥を介して促進されているのではないか、という仮説を立てた。より結晶性の高いイリジウム下地を用いることで、イリジウム中への炭素固溶を低減し、その結果、イリジウム表面のモルフォロジー変化を抑制することができると考えている。そこで、より高温でのスパッタリング、及び高温での熱処理によって、高品質なイリジウム下地を作製し、それをグラフェンのCVD成長に用いる実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究費に少額の残額が生じたため、翌年度に使用することとした。
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