2017 Fiscal Year Research-status Report
新材料Siドープp型GaAsSbのアクセプタ準位と熱的安定性評価
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17K05046
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Research Institution | Suzuka National College of Technology |
Principal Investigator |
横山 春喜 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (20583701)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | GaAsSb / p型 / イオン化エネルギー / ホール効果 / キャリア濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
p型GaAsSbはⅢ-Ⅴ族化合物半導体デバイスの特性改善が期待できる材料として近年注目されているが、Siドープp型GaAsSb結晶の物性をこれまでに詳細に評価した報告例はない。本研究は、Siドープp型GaAsSbのSiアクセプタのイオン化エネルギーを明らかにすること、p型キャリア濃度とGaAsSb/InP界面におけるSiの熱的安定性を評価することを目的として進めている。 (1)エネルギー準位評価:室温のホール効果測定を用いてSiドープp型GaAsSbのキャリア濃度と移動度の関係を詳細に調査した。有極性光学フォノン散乱、変形ポテンシャル散乱、合金散乱、イオン化不純物散乱を考慮した正孔移動度の計算結果を実験値と比較した結果、計算値と実験値はほぼ一致しており、考慮した4つの散乱以外の散乱の影響を受けていないことが分かった。この結果は、Siドープp型GaAsSbが格子欠陥等を含まない高品質な結晶であることを示している。さらに、ホール効果測定の温度を78K~300Kまで変化させてキャリア濃度の温度変化を測定した。得られたデータを、一つのアクセプタと一つのドナーを考慮したキャリア濃度の温度変化と比較した結果、良い一致が得られることが分かった。また、フィッティングにより得られたSiアクセプタのイオン化エネルギーは0.01~0.02eVにあることが分かった。 (2)熱的安定性評価:p型GaAsSbのサンプルの熱処理を行う装置を作製した。大気中で熱処理を行った場合にはサンプル表面が酸化し、本来の電気的特性を得られない可能性がある。そこで、卓上ランプ加熱装置(アドバンス理工製、MILA-5000)を購入し、この装置に、油拡散ポンプ、ロータリーポンプからなる真空排気系、ガス配管系を取り付けて、不活性ガス(N2)雰囲気中で熱処理ができるようにした。また、排気ガスを室外に取り出す実験室のダクト系も整備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)エネルギー準位評価:平成29年度計画では、極低温から室温のホール効果測定によりキャリア濃度の温度変化を測定し、その傾向からSiアクセプタのエネルギー準位位置を見積もることを計画していた。これまでに、測定温度を78K~300Kまで変化させたホール効果測定を行い、キャリア濃度の温度変化を測定した。さらに、得られたデータを解析することで、大体のSiアクセプタのイオン化エネルギーの値を把握することができている。 (2)熱的安定性評価:平成29年度計画では、不活性ガス中で最大700℃まで加熱が可能な熱処理装置の作製を目的としていた。この計画に関しては、市販の卓上ランプ加熱装置をベースに、装置の作製を行い、不活性ガス中で加熱が可能な装置の作製を完了している。 以上のように平成29年度計画で計画していた内容はほぼ達成できているので、おおむね順調に進捗していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)エネルギー準位評価:研究実績の概要で述べたように、78K~300Kのホール効果測定によって、Siアクセプタのイオン化エネルギーを見積もれる見通しが得られた。今後は、さらに詳細な分析、再現性評価を行い、Siアクセプタのイオン化エネルギーを決定する。さらに、Siドープn型GaAsSbを用いて同様の評価を行えば、Siドナーのイオン化エネルギーの測定ができる可能性が高い。そこで、当初予定していたフォトルミネッセンス(PL)を用いた評価よりもSiドープn型GaAsSbの評価の優先順位を上げて検討を進め、Siドナーのイオン化エネルギーについて明らかにする。その後、PLを用いてSiドープGaAsSbの発光を測定する。バンド構造を考慮しながら、発光スペクトルの解析を行い、ホール効果測定によって得られたSiアクセプタ、Siドナーのイオン化エネルギー値の信憑性を検証する。 (2)熱的安定性評価:熱処理装置を用いてp型GaAsSbのサンプルの熱処理を行う。熱処理後のサンプルのキャリア濃度の測定は、ホール効果測定を用いて行う。これにより、デバイスを作製する際のプロセス温度(500℃)以下の領域におけるキャリア濃度の変動の有無を明確にする。また、キャリア濃度が変動するまで熱処理温度を上昇させて、変動が起き始める温度を特定する。さらに、キャリア濃度の温度依存性とPLを評価し、キャリア濃度の変動の原因を明確にする。ヘテロ界面でのSiの拡散については、二次イオン質量分析(SIMS)を用いて、熱処理後のサンプルのSiのプロファイルを分析する。この分析からGaAsSb/InP界面で、Siの拡散が起き始める温度を明確にするとともに、その時の拡散定数を見積もる。
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Causes of Carryover |
成果が出始めたのが年度末近かったため当初予定していた学会とは異なる研究会で成果報告を行った。このため旅費、参加費に差額が生じた。この差額は次年度以降の研究成果の発信に活用する。
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