2018 Fiscal Year Research-status Report
Atomic layer etching of transition metal chalcogenide with gas cluster ion beam
Project/Area Number |
17K05061
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
豊田 紀章 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (00382276)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ガスクラスターイオンビーム / 遷移金属カルコゲナイド / 原子層エッチング / MoS2 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、単層で新奇物性を示すため新たな電子材料として期待されている遷移金属カルコゲナイド(二硫化モリブデン)のエッチングを、数eV/atom程度の超低エネルギーかつ超高密度の照射が可能であるガスクラスターイオンビーム(GCIB)を用いて行う。従来のイオンビームよりも低損傷・低温で表面反応を促進することが可能であることから、MoS2膜の原子層エッチングが出来るのではないかと考えている。本研究では、MoS2原子の酸化状態や損傷を解明して、ガスクラスターイオンビームによるMoS2の原子層エッチング条件を探索し、大面積・単層MoS2膜の実現を目指している。 平成30年度は、機械剥離法や溶媒からの抽出によって得られた多層MoS2試料に、Ar, O2,SF6などの各種ガスクラスターイオンビームを様々な条件で照射し、エッチング深さを評価した。あらかじめMoS2小片の高さ・形状を原子間力顕微鏡(AFM)で測定しておき、GCIBの加速エネルギー、照射量、照射角度を変えて照射後、同一MoS2小片の形状をAFMで測定し直すことにより、各条件でのエッチング深さを測定した。ガスクラスターイオンビームを20 keV, 5x1015ions/cm2で法線方向から75oで照射した場合、MoS2のエッチング深さは3.5nmであることが分かった。したがってイオン照射量を4.5x1014ions/cm2とすることにより、単層MoS2エッチングが可能であることが示された。また、MoS2小片の表面形状に大きな変化は見られず、MoS2を低損傷でエッチングできていることが示唆された。今後ラマン分光法やin-situ X線光電子分光法などにより、MoS2のダメージや組成、電子状態評価などを行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GCIBのMoS2小片の原子層エッチングを照射角度などを変えて行い、制御可能なイオン照射量で単層エッチングが可能な見通しを得たことから、おおむね順調に推移していると考えている。今後MoS2膜のダメージや組成、電子状態評価などを行い、さらに詳細な原子層エッチング条件を探索する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、平成29,30年度に得られたMoS2の原子層エッチング条件を元に、照射後のX線光電子分光測定(XPS)、ラマン分光測定、分光エリプソメーター、断面TEMによる評価を行い、表面状態、結晶性、表面・断面構造等の評価を行う。特にXPS測定では、既存のXPS・ガスクラスタービーム複合装置を用い、照射直後のMoS2の電子状態や酸化状態を真空一貫で評価する。ガスクラスタービームのガス種、サイズ、価数、エネルギー、照射角度等のパラメータを変化させてMoS2および表面に形成されるMoOxの電子状態や表面形状を評価し、ガスクラスタービームのMoS2への照射効果や反応メカニズムについて解明する。
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Causes of Carryover |
研究の進展に伴い、新たな分析を行う必要が出てきたため、次年度繰越金は、測定費の一部として使用する予定である。
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