2017 Fiscal Year Research-status Report
Elucidating nonlinear dynamics of nanometer-scale fluids with microscopic experimental study
Project/Area Number |
17K05064
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
影島 賢巳 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (90251355)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非線形性 / ニュートン流体 / 粘弾性 / 緩和時間 / 生体適合性高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子と流体の複合系が示す非線形性を探るため、ナノメータースケールのギャップ中で微小振幅のシアによる粘弾性計測を行った。高い親水性を持つ生体適合性高分子である2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine (MPC)をSi基板上に吸着させ水和させた試料に、直径20 μmのガラスコロイド球探針を、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて接触させ、シアを及ぼして粘弾性応答を検出した。シアの振幅を1 nmから0.02 nm程度の範囲で掃引し、粘弾性から算出される緩和時間の振幅依存性をプロファイルにすると、3領域に大別される特異的な挙動を示した。最も振幅の大きな第1領域とそれに次ぐ振幅レンジの第2領域では、緩和時間には特徴的な双安定的が現れ、第1領域では不連続な飛びの間にニュートン的な平坦部が多く見られる。最も小振幅の第3領域ではこれまでの2値的性格が完全に消失し、荷重力への単純な依存性のみとなる。 以上のデータを解釈するため、対照実験としてMPCを吸着させないSi基板を用いて水中で同様の測定を行い定性的な比較を行ったところ、第1領域での不連続的飛びは本質的にMPC基板と差異がないのに対し、第2領域では、探針が試料に与える荷重が弱いときにのみ緩和時間が低い値の分枝をとることが見いだされた。これは、低荷重の状態では親水性の探針と基板の間にニュートン的流体としての水が介在するのに対して、荷重が大きくなれば流体としての水は存在できず、固体同士の接触に近い状況になると解釈できる。この事実から類推して、前記のMPCの緩和時間の2値性も、水分子が探針-基板間に介在するか否かの違いである可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年4月に前所属大学から現在の大学に異動した。それに伴い、研究の核となる自作の広帯域磁気変調式原子間力顕微鏡システムを、解体して前所属先から運搬し、再び現在の所属先で再立ち上げを行った。こうした工程に時間を要したのに加え、再立ち上げの途中で装置の制御回路に故障があり使用不能な状態であることが判明したため、その原因究明と修理にも想定外の時間を要した。そのため、当初想定してた実験の一部が未実施である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に研究を行ったMPCの非線形性が、球状探針の親水性・疎水性によってどのように変化するかを探るため、これまでの親水性のガラスコロイド探針に代わり、疎水性のカーボン球探針を使用することを計画している。ただし、該当する探針には市販のものがないため、市販のAFMカンチレバーに、追加工としてカーボン球を接着する作業が必要である。信頼性の高い計測を実現するためには、幅20ミクロン程度という微小なカンチレバーに、顕微鏡下での手作業によって、再現性ある位置にカーボン球を貼付する手法を開発する必要がある。 また、臨界現象と非線形性の間の関係にも注目している。相分離系の臨界状態を実現するために温度可変の計測に対応できるよう装置の改造なども進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
前職での所属大学からの異動に伴う装置の移設、さらに再立ち上げの際に判明した装置の故障とそれに伴う修理に時間を要し、当初予定していた実験のうち一部が年度内に実施できなかった。そのため、年度内に実験で使用する予定であった消耗品のAFMカンチレバーや試薬などための費用を次年度に使用する分とした。
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