2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K05065
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
鶴岡 徹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主幹研究員 (20271992)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 可変容量素子 / ナノイオニクス / 酸化物 / 固体電解質 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属/酸化物界面の酸化還元化学反応とナノスケールのイオン移動を利用した新しい可変容量素子を開発するために,平成30年度は前年度に見つけた8%程度の窒素ドープしたリン酸リチウム膜を白金電極で挟んだクロスバー素子を作製し,直流電圧印加における容量変化の周波数依存性を調べた。その結果,DCからkHz帯にかけて2Vの電圧印加によって最大50%程度の容量変化を見いだした。この容量変化は低温になるほどより低周波側にシフトすることから,リン酸リチウム膜中のリチウムイオンの移動よってイオン濃度の高い層とイオン濃度の低い層が形成されることで容量変化が生じると考えられる。電圧極性に対する容量変化は対称な素子構造のため容量変化の方向に極性依存は観られない。すなわち,0Vで最も高い容量を示し,両極性の電圧印加により容量が減少する。しかし,一方の白金電極側にコバルト酸リチウムを挿入すると,容量変化の方向は極性に依存するようになり,極性を跨いで電圧を印加すると容量は一方向に増大あるいは減少する。これは,コバルト酸リチウム層がリチウムイオンのリザーバーになってリチウムイオンを出し入れしているためと考えられる。 可変容量素子として一般的に用いられるバリキャップダイオードは,電子移動に伴うコンデンサ容量がDCからMHz帯までほぼ一定量で変化し,イオン移動型の可変容量素子とはかなり異なる振る舞いであることもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
窒素ドープリン酸リチウム膜を用いて,イオン移動による容量変化機能発現の目処が立った。この素子を電圧制御型発振回路に組み込む試みも開始しており,発振自体はすでに確認している。素子を並列化することにより容量変化の制御もできるようになった。薄膜材料の探索に時間を要したが,研究の進捗状況は概ね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,まずイオン移動型可変容量素子を用いて電圧制御型発振回路の動作実証に注力する。容量変化の発現機構そのものはまだ未解明な部分があるため,詳細なインピーダンス分光の解析等により容量変化機構を明らかにする。これにより,所望の容量変化を実現するための材料設計指針を得ることができると期待される。平行して,より高周波帯で容量変化を実現するための材料探索を引き続き行う。
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Causes of Carryover |
可変容量を実現するための適切な薄膜材料が見つかり,今年度は主に素子作製に必要な幾つかのメタルマスク,プローブ,発振回路製作のための電子部品の購入だけだったので,残りは次年度に繰り越すこととなった。新年度の予算と合わせて,より高周波帯で容量変化を生じる薄膜材料の探索のための分析装置の購入を検討している。
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Research Products
(3 results)