2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K05065
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
鶴岡 徹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主席研究員 (20271992)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 可変容量素子 / 電圧制御型発振回路 / 酸化物 / 固体電解質 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度までに、窒素ドープリン酸マグネシウム(LiPON)のスパッタ膜を用いたPt/LiPON/Ptキャパシタ構造において、電圧印加により容量変化を見いだし、当初の目標であったイオン移動による可変容量機能の原理実証は達成した。令和1年度は本可変容量素子の具体的な応用を示すために、電圧制御型の発振回路(Voltage-Controlled Oscillator: VCO)に組み込み、その動作実証を試みた。シュミットトリガインバータを用いたVCO回路を組み、その帰還回路部分に本可変容量素子を実装した。キャパシタ容量の可変範囲は、真空プローバーに入れた50umサイズの素子の並列接続と温度を変えることにより調整した。その結果、発振周波数は入力電圧と帰還回路の抵抗値を変えることに数10Hzから30kHzまでの範囲で可変可能であることがわかった。この発振周波数の変化は、半導体接合界面の空乏層を制御することにより容量を変化させるバラクターダイオードを用いたVCOと同じ振る舞いである。本研究課題では単純な素子構造中のイオン移動により同様の機能発現を実証できた。 電圧印加の容量変化を交流インピーダンスで解析した結果、観測された容量は主にPt/LiPON界面に形成される電気二重層に起因することがわかった。Pt電極間に電圧を印加すると、LiPON層の誘電分極により電気二重層の電荷が一部相殺されて素子容量が減少する。このことから、より大きな容量変化を実現するためには高い誘電率の母体材料に高いイオン伝導性を付加すればよいことがわかる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
窒素ドープリン酸リチウム膜を用いた可変容量素子をVCO回路に実装し、発振回路の動作実証を行ったことにより、当初の目標よりもさらに進展した結果が得られたと言える。より高周波帯域で動作させるために必要な材料設計指針も明らかになった。しかし、現状の発振周波数の高周波側の限界値は30kHzであり、簡単に100MHz以上で発振するバラクターダイオードを用いたVCO回路に比べれば不十分である。これは主にLiPON層の低いイオン伝導度が律速していると考えられ、より高伝導な固体電解質が求められる。 原理実証という観点では当初の目標を上回ったが、データの取得と解析に時間がかかったため、論文の投稿が遅れてしまった。これはR2年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,得られた成果をまとめて論文を投稿する予定である。適宜、必要なデータを取得して出来るだけ早く投稿したい。
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Causes of Carryover |
データの取得と解析に時間がかかってしまったため、得られた最終の成果をまとめた論文の投稿が終わっていない。繰り越した予算は、論文を執筆にする当たって必要な投稿料や英文校閲の費用、そして追加で必要となるデータの取得にかかる費用として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)