2017 Fiscal Year Research-status Report
2モードファイバに動的励起する周期摂動を用いた全ファイバレーザの高機能化
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17K05074
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
坂田 肇 静岡大学, 工学部, 教授 (40377718)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ファイバレーザ / 波長可変レーザ / Qスイッチレーザ |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)異種2モードファイバ(TMF)を用いた波長可変バンドパスフィルタ(BPF) 勾配屈折率(GI)型TMFに長周期ファイバグレーティング(LPFG)を形成することで伝搬光をLP01モード(基本モード)からLP11モードに変換させた。GI-TMFに融着接続した階段屈折率(SI)型TMFに周期可変LPFGを誘起させ、通過帯でのみ伝搬光をLP01モードに戻す変換を行った。本動作原理に基づくBPF特性を向上させるため、非対称モードであるLP11モードのTMF伝搬中の電界分布変動を測定評価した。その結果を踏まえて、変換後のLP11モードの主軸をSI-TMFのLPFGの非対称軸に整合させ、LP01モードへの逆変換を安定させた。BPFの動作確認時5dB以上あった通過帯波長での挿入損失を2dB程度まで低減でき、周囲遮断波長とのアイソレーションも向上した。また、今回の実験ではLPFGはコイルばねと磁力で誘起させたが、GI-TMFにおけるLPFGは周期固定でよいため、熱変動に強く長期安定性も期待できるアーク放電による作製を試みた。シリカファイバに周期屈折率摂動を形成して、20mm程度のLPFG長で十分なモード変換を確認した。 (2)動的応力付加によるファイバ内Qスイッチング 発振波長可変化と並行して、ファイバ内でQスイッチングを実現した。共振器Q値を制御する原理は動的周期摂動の導入であり、波長制御時とは異なり利得帯域全体に対して損失制御を行った。高速ピエゾアクチュエータ(PA)を使用し、そのファイバ圧着面に波状レリーフを形成した。PAの高速化に伴う低ストロークを補うため波状レリーフに予め負荷を与えた。その結果、適切な負荷の付与により、Qスイッチレーザ発振特性は向上し、Tm添加ファイバレーザにおいて、160mW程度の励起光パワーでピーク値3W、パルス幅900nsのレーザパルスを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)異種2モードファイバ(TMF)を用いた波長可変バンドパスフィルタ(BPF) モード分散特性の異なる2つのTMFに形成したLPFGを利用するBPFの動作を実現するために鍵となるのは変換後TMF間を伝搬するLP11モードの振舞いである。即ち、後段のLPFGにおいて効率良くモード変換を行うためにはLP11モードの電界分布がLPFGの非対称軸と整合する必要がある。そこで、前段のLPFGで誘起されるLP11モードが、伝搬後に後段のLPFGと整合するように予め軸形成方向を制御した。その結果、安定した大幅な特性改善が得られた。 さらに、上記BPFとは構成が異なるが、LPFGの損失帯を利用してTm/Ho共添加ファイバレーザの発振波長の制御を実行し、1.9μm帯をおおよそ網羅する波長可変範囲を得ることができた。以上のように、ファイバ外部に設けた回転型回折格子等を用いずに、ファイバ共振器内で波長制御できるようになれば、高効率かつ安定な波長可変動作が期待できる。 (2)動的応力付加によるファイバ内Qスイッチング 波状レリーフとPAを用いたQスイッチングにおいては、高速PAの低ストロークを補うため波状レリーフに予め負荷(プレロード)を与えた。プレロードに対するパルス出力やパルス幅を測定した結果、プレロードには最適値が存在し出力特性が劇的に向上することが判明した。今回、Tm添加ファイバレーザにおいて、その成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
レーザ波長制御については、異種TMFのLPFG融合によるBPFのさらなる特性向上と並行して、新たにファイバ内のマルチモード干渉を利用したBPFの研究を進める。基本的にはマルチモードファイバ(MMF)を単一モードファイバ(SMF)で挟み込んだ構造であり、実現すれば極めて小型のBPFとなる。現在、1.55μm帯で動作確認実験を行っている段階であるが、透過スペクトル測定から孤立した通過帯を確認できている。今後、1.9~2μm帯でのBPF動作確認、ならびに、通過帯のシフトを実現する研究を進める。さらに、波長可変BPFをファイバレーザ共振器に組み込み、発振波長の制御をおこなう計画である。 全ファイバ共振器構成のQスイッチング動作については、PAによる光損失制御のダイナミックレンジを向上させる計画である。可能な限り小さな応力でファイバ中にLPFGを動的に形成できるように、曲がり損失に対して閾値の低い構造を研究する。また、Tm添加ファイバに加えてTm/Ho共添加ファイバでレーザ共振器を構成することで、発振波長範囲の長波長拡張を行う計画である。その他、励起レーザダイオードの変調駆動、WDMカプラの帯域調整、出力分岐カプラの最適化などを並行して進め、レーザパルスのさらなるピーク出力向上を目指す計画である。
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Causes of Carryover |
研究成果については光学やレーザ工学に関する参加者数の多い国際会議での講演発表を計画している。平成29年度においては、研究成果が年度内開催の国際会議の投稿締切りに合わず出席できなかったため、平成29年度内の投稿締切りで平成30年度に開催される米国光学会(OSA)主催のAdvanced Photonics Congress(講演受諾済)に出席し講演を行う。さらに、新たな研究成果を平成30年度内に発表したいと考えている。 次年度使用額と今年度請求額は、上記国際会議への参加費や旅費に使用するほか、消耗品費として、希土類添加ファイバや数モードファイバ、その他特殊ファイバ等のファイバ素線、WDMカプラ、分岐カプラ、アイソレータ等のファイバ部品、励起用レーザダイオード、光学ステージ、光学部品、電気部品などへの使用を計画している。
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Research Products
(10 results)