2017 Fiscal Year Research-status Report
カイラル磁性ナノ格子による非相反的光学活性の増強とバイオフォトニクスへの展開
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17K05087
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Research Institution | Akita Industrial Technology Center |
Principal Investigator |
山根 治起 秋田県産業技術センター, 電子光応用開発部, 上席研究員 (80370237)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 先端機能デバイス / 磁気光学 / バイオ化学センサ / 垂直磁化 / 光物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、垂直磁気異方性を有する強磁性-貴金属複合膜に対して、鏡映対象性を持たないナノ構造体を周期的に配列させた「カイラル磁性ナノ格子」を構築することを目的としている。これまで、フォトニック結晶あるいは局在プラズモン共鳴を有する磁性ナノ構造体において、特異な磁気光学物性を報告してきた。この磁性ナノフォトニクスに対して、人工的なカイラル構造を付与することで、非相反的光学活性に係る新たな物理現象の発現ならびに増強効果の実現を目指したものである。平成29年度は、カイラル磁性ナノ格子として用いる磁性積層膜に関して、垂直磁気光学物性に係る基礎的検討を行った。[CoPt/ZnO]積層膜の垂直磁気異方性の発現機構を明らかにするとともに、良好な垂直磁気光学特性を得ることが可能な成膜手法「界面制御技術」を確立することができた。次年度は、[CoPt/ZnO]積層膜を基本とした強磁性-貴金属複合膜に対して、微細加工を施すことで、カイラル磁性ナノ格子を作製する計画である。 さらに本研究では、カイラル磁性ナノ格子のバイオフォトニクスへの応用についても計画している。磁性ナノ構造体における非相反的光学活性を利用することで、高感度バイオセンサあるいは鏡像異性体の高精度評価解析手法など、バイオ光計測に係る新たな基盤技術の確立を目的としたものである。今年度は、磁性積層膜における磁気光学共鳴現象の旋光度計測への応用について検討を行った。その結果、本現象が、入射光の偏光面の角度に対して非常に敏感であることを見出した。鏡像異性体を高精度に計測できる可能性を示す研究成果であり、新たな旋光度計測装置として特許出願を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、垂直磁気異方性を有する強磁性-貴金属複合膜に対して、カイラル磁性ナノ格子を構築することで、非相反的光学活性に係る新たな物理現象の発現ならびに増強効果の実現を目的としている。今年度は特に、カイラル磁性ナノ格子に用いる磁気光学材料の開発に注力した。[CoPt/ZnO]積層膜に対する電子状態および結晶構造解析等により、垂直磁気異方性の発現機構を明らかにするとともに、積層界面の高精度制御により、実用的な磁気光学性能を得ることが可能な成膜手法を構築することができた。複数の極薄CoPt層をZnO光干渉層中に挿入した[CoPt/ZnO]多重構造多層膜において、実用化の際に必要となる基本性能(大きな磁気光学効果と小さな駆動磁場の両立)の実現に成功した。これにより、次年度に予定している微細加工に用いる材料を開発することができた。 さらに、磁気光学効果を利用した新たなバイオ計測機器に関する検討にも着手した。磁性積層膜における磁気光学共鳴現象が、入射光の偏光面の角度に対して非常に敏感であることを見出した。比較的簡単な装置構成により、カイラル物質(鏡像異性体)を高精度に計測できることを示す研究成果であり、新たな旋光度計測装置として特許出願を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、研究初年度に開発した高性能磁気光学材料を利用することで「カイラル磁性ナノ格子」の構築に係る研究開発を実施する。具体的には、同材料に対して、電子線描画装置を用いることで、数百nmレベルの卍型形状を有するナノ構造体を周期的に配列させる。強磁性-貴金属ナノ構造体における磁性プラズモニック現象の発現を目指したものであり、複雑な三次元構造を持った光学ナノ構造体を構築する必要がある。理論計算による光学設計が不可欠であり、時間領域差分法を用いたシミュレーションソフトを新たに導入して素子設計指針を確立し、実験の効率化を図る。一方、初年度に見出した磁気光学共鳴現象を利用した「旋光度計測」に関しては、入射光の偏光度測定に対する基本動作を確認し、特許出願が完了した段階である。次年度は、実際に鏡像異性体を測定するなどして、本計測手法の基本性能を把握するとともに、測定精度の向上に向けた検討を実施する。さらに最終年度は、カイラル磁性ナノ格子における非相反的光学活性を導入することで、バイオ光計測に係る新たなを学術領域としての発展を目指す。 以上の研究成果に対して、特許出願ならびに学会・論文発表を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は1,000円以下であり、使用計画に変更は予定していない。
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