2018 Fiscal Year Research-status Report
フェムト秒レーザー誘起プラズマにおける気相反応制御因子の解明
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17K05094
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松田 晃孝 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (10413999)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 強レーザー場 / レーザーフィラメント / レーザー誘起プラズマ / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.反応生成物の直接質量分析:レーザープラズマ反応により得られる生成物のサンプリングの高効率化を図るため,前年度に構築した直接質量分析システムの差動排気機構の改良を行った。装置の評価を行うため,空気を試料ガスとした実験を行った。チタンサファイアレーザー再生増幅器からの出力レーザー光(中心波長800 nm,パルス 幅45 fs,繰り返し周波数1 kHz)を二つに分割し,それぞれ反応レーザー光および質量分析のイオン化レーザー光とした。その結果,改良前の装置では検出されなかったオゾンの観測に成功するとともに,数十倍程度の検出効率の向上が確認された。 2.生成物のレーザーパラメータ依存性:レーザー場強度に応じて変化するレーザープラズマ反応メカニズムの詳細を明らかにするため,プラズマ中のレーザー場強度の精密な見積もりを行った。チタンサファイアレーザー再生増幅器からの出力を焦点距離200 mmのレンズを用いて空気中に集光し,発生したレーザープラズマの発光径と蛍光スペクトルの計測を行い,入射レーザー光のパルスエネルギーに対するプラズマ中のレーザー場強度の校正曲線の作成を行った。その後,ヘキサン/窒素混合ガスをフローさせたチャンバー内にて同条件でレーザープラズマを発生させ,生成物のレーザー場強度依存性を観測した。強レーザー場におけるヘキサンの単分子解離反応のレーザー場強度依存性との比較を行った結果,多体反応の生成物として得られた炭素数の6および8の水素末端ポリインの生成量のレーザー場強度依存性が,単分子反応において生成する解離フラグメントのレーザー場強度依存性を強く反映することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,レーザー誘起プラズマにおける気相多体反応によって得られる生成物や中間体を質量分析計へと直接サンプリングし,その反応過程を明らかにすることを目的としている。本年度は,前年度に構築した直接質量分析システムの差動排気機構の改良を行うことにより装置の感度を高め,改良前の装置では観測できなかった生成物,中間体の観測に成功した。また,レーザー誘起プラズマにおける反応過程に関して,反応場におけるレーザー場強度を直接的に決定することで,単分子反応と対応させ理解できることを示した。これらのことから,研究全体としておおむね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
レーザー誘起プラズマにおける気相反応制御因子の解明に向け構築,改良を進めてきた直接質量分析システムを用い,これまでのレーザー場強度をパラメータとした研究において選択的な反応が観測されているエチレン分子を中心に,幅広い炭化水素化合物を対象とした研究を進める。また,レーザー場強度だけでなく,パルス幅,波長,楕円偏光度を系統的に変化させた計測を行い,強レーザー場における単分子反応との比較を行うことで,多体反応メカニズムおよびその制御因子について検討を行う。
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Causes of Carryover |
研究費の効率的な執行により未使用額が生じた。次年度以降,実験に用いる試料ガスの購入に使用する。
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