2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K05095
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
栗田 弘史 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70512177)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大気圧プラズマ / 生化学反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、大気圧低温プラズマの生物・医療応用における細胞応答の作用機序の理解に重要な示唆を与える、生化学反応への影響の解明を目的としている。既往の研究は、生化学反応に寄与する生体高分子の解析にとどまっており、本研究ではタンパク質が機能しているその場にプラズマを照射したときの生化学反応への影響を解析することを目指している。初年度は、モデル酵素の選定・プラズマ照射と生化学反応解析手法の確立・ダメージ解析を行った。検討の結果、モデル酵素として過酸化水素を分解するカタラーゼを選択した。過酸化水素は、プラズマ照射によって水溶液中に多く生成され、抗腫瘍効果の一因とされている。溶液中過酸化水素濃度の測定は2年目の内容の一部であり、加えてカタラーゼと組み合わせることで溶液中活性種制御にも利用できると考えた。まず、カタラーゼ溶液に大気圧プラズマジェットを照射し、その後カタラーゼ溶液を分取して過酸化水素水と混合し、過酸化水素濃度を測定した。その結果、カタラーゼ濃度が低い場合にプラズマ未照射の試料と比較して過酸化水素濃度の低下が小さかった。これはプラズマ照射によってカタラーゼの失活を示唆している。加えてプラズマ照射後のカタラーゼ溶液そのものの過酸化水素濃度を測定したところ、過酸化水素濃度はカタラーゼ濃度依存的に低下し、プラズマ照射中に水溶液中に生成した過酸化水素が即座に分解されていることが示唆された。この実験系はプラズマ照射溶液中の活性種制御という点でも有望であると考えられるが、基質の生成と分解が同時に起こるため、酵素反応の解析が比較的難しく、別のモデル酵素の検討も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル酵素の選定・生化学反応解析手法の確立では、2年目に実施予定していた活性種測定を初年度に前倒しで実施することができた。本研究課題やこの研究分野における有用性は示されたものの、比較的複雑な反応系であるため、別の生化学反応も検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に実施したものより、単純で解析しやすいモデル生化学反応の選定を継続して行い、生化学反応解析手法を確立する。一方で、プラズマ照射によって生成した過酸化水素のカタラーゼによる分解も学術的意義があると思われる。例えば、カタラーゼによって選択的に過酸化水素を分解できれば溶液中活性種制御や生成メカニズムの解明に寄与すると考えられる。派生的な内容ではあるが、この内容についても引き続き実施を検討する。
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Causes of Carryover |
当初、生化学反応を可視化するためにカメラの購入を計画していたが、配分額・モデル酵素反応の選定などの観点から検討を行った結果、購入しなかった。今年度モデル酵素反応系と解析方法を精査して適切に使用する予定である。
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Research Products
(10 results)