2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K05163
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 正俊 東京工業大学, 理学院, 准教授 (30534052)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 整数論 / ゼータ関数 / L関数 / 多項式 / Schur-Cohnの判定法 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究によって, 本課題の対象であるゼータ関数から生ずるある種の関数空間を研究する手法は,本質的かつ大幅に改良された.この改良は, 本課題の初期には線形な積分作用素を用いて行っていた関数空間の構成法を, 共役線形な積分作用素に対して書き換える事により成される.本年度はこのような研究をさらに推し進めると共に,細部の検証や, 理論全体を見通しよく整理することを行い, その成果の一部を論文にまとめた. その中には,本課題と関わりの深い,正準系のスペクトル逆問題に関する新たな解法も含まれており, 整数論のみならず解析学の観点からも興味深い成果が得られたと考えている.また,通常の正準系のスペクトル理論において,正準系の解として現れる関数は整関数なのだが,ゼータ関数への応用の仕方を念頭に,必ずしも整関数でも有理型関数でさえないような関数が解として現れても良いように, 若干枠組みを広げた所で正準系と同種の理論を整備することも行い,得られた成果を論文にまとめた.
いっぽう, 本研究の手法をゼータ関数ではなく多項式の根の分布の研究に応用した成果を初年度に発表したのだが,その際に扱うことのできた多項式は実数係数のものに限られていた.昨年度に成された研究手法の改良により,それを複素係数の多項式の根の分布の研究に拡張できる可能性が見えたので, 本年度はそのような拡張についても研究を進めた. その成果の一つとして, 多項式の根の分布をその係数の情報によって述べる古典的なSchur-Cohnの判定法と, 上記で述べた正準系の理論を結び付ける新たな関係性が見出された.こちらの成果の一部も研究集会などでアナウンスした他,論文にもまとめた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究実績の概要に記したような進展が得られ,最終年度である次年度に向けて,おおむね満足すべき進展が得られたと考えられるため.しかしながら,新型コロナウィルス(COVID-19)流行の影響として,本年度も国内外の出張が大きく制限されたことにより,他の研究者と意見を交わす機会は十分には得られなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要で述べたように, 昨年度と今年度の研究により, 本課題の目指す理論はひとまずの完成形に向けて大きく近づいた. 最終年度である次年度には,手法や議論などをより洗練して,細部の議論を注意深く見直していくことにより, 研究を完成させることを目指す.さらに, 本年度中に正準系のスペクトル逆問題に関する本課題での解法と既知の解法を比較検討する中で,本課題の手法を,ゼータ関数の理論において重要な「明示公式」と呼ばれる特別な等式と結びつける新たな関係性が見出された.来年度は, この関係性から期待される成果の獲得についても研究を進める.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス(COVID-19)の世界的流行の影響により,予定していた出張や研究者の招聘が中止または延期となったことで次年度使用額が生じた.その分は,延期となった出張や招聘の日程の再調整や,新たな出張や招聘の企画により使用する予定である.とはいえ,コロナウィルスの蔓延状況については依然先が見通せない状況が続いているため,最終年度に使用しきれなかった分は返還することも視野に入れている.
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Remarks |
研究代表者の研究成果等に関するwebページ
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