2019 Fiscal Year Research-status Report
新しい簡約理論による格子不変量の計算アルゴリズムの研究
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17K05170
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡部 隆夫 大阪大学, 理学研究科, 教授 (30201198)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スツルム語 / 複雑性 / 連分数 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、博士前期課程の学生であった大中鈴絵の指導に関係して、スツルム語の複雑度とスツルム語から定まる実数の無理数性指数との関連性に興味を持ち、その研究に時間を費やした。この研究課題の主題である基本領域の構成とは直接的な関連性はないが、計算機を多用した実験的計算から結果を導くことができたので、方法論的かつ計算手法の技術的な点で簡約アルゴリズムの探索の研究に役立つものである。 BugeaudとKimは令和元年のアメリカ数学会紀要371巻第5号で出版された論文において、有限集合をアルファベットとする無限語に対し、反復指数(exponents of repetition)という新しい実数量を導入し、とくにスツルム語の場合に, 固定した自然数を底とし与えられたスツルム語から定まるある実数の無理数性指数(irrationality exponent)が、反復指数で表示できるという意外とも思える関係性を証明した。またBugeaudとKimは、反復指数をスツルム語全体の集合上で定義された関数とみて、その最小値と最大値を決定し、最大値が反復指数の値の集合における孤立点であることも証明した。 先に述べた無理数性指数との関係性から、反復指数の値集合を調べることは重要と考え、とくに最大値が孤立点であることから、値集合に含まれる間隙の決定を大中鈴絵と共に試み、最終的に最大値の次に反復指数がとる値を決定し、その求めた値が値集合の集積点の中で最大のものであることを証明することができた。 以上の結果について、大中鈴絵が令和2年3月14日の明治学院大学における数論セミナーで報告を行った。また、簡約アルゴリズムの探索につては、令和2年1月20日から1月24日にかけて京都大学数理解析研究所で開催された研究会で早田孝博と情報交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
具体的なアルゴリズムの構成については、予測より計算量が多く効率的な算法を見つけることができず苦慮している。 実績の概要に記したように、博士前期課程の学生指導に関係した研究に時間を割き、その研究に集中していたため、進捗がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
低次元の場合でも具体的な算法の探索だけでは限界があるため、もう少し理論的なアプローチを詰めていく予定である。早田孝博との情報交換で、Vinbergの1960年から1970年代の論文の方法論が使えそうなことがわかったので、その手法を学ぶ。
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Causes of Carryover |
2020年3月に学会出張を予定していたが、新型コロナウイルスにより学会が中止となったため,その旅費が未使用となった. 次年度の図書購入費用に充てる計画である.
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Research Products
(1 results)