2019 Fiscal Year Research-status Report
ゼータ関数・テータ関数の加重・多重平均化―定式化と挙動解明―
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17K05182
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
桂田 昌紀 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (90224485)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ゼータ関数 / 漸近展開 |
Outline of Annual Research Achievements |
I) Lerch ゼータ関数の Laplace-Mellin 型,Riemann-Liouville 型積分変換の漸近的挙動:本研究代表者は,この研究の方向性において,現在,表記の積分変換や,これらの種々の合成変換の pivotal parrameter $s$ が,適当な扇状領域を $s\to$ となるとき,また,$s\to\infty$ となるとき,其々の場合について,十分満足すべき形の完全漸近展開を導出することに成功した.得られた成果を論文 "Asymptotic expansions for the Laplace-Mellin and Riemann-Liouville transforms of Lerch zeta-functions" として現在執筆中で,欧文学術雑誌に投稿予定である; II)2重2複素変数(非正則)Eisenstein 級数の漸近的挙動:複素上・下半平面の直積 $\mathcal{H}^+\times\mathcal{H}^-$上にパラメタ $(z_1,z_2)$ が存在するような2重2複素変数非正則 Eisenstein 級数に対して,本研究代表者らは,$(z_1,z_2)$ が適当な2重扇状領域を,i) 点 $(0,0)$ に近づくとき,及び;ii)(無限遠)点 $(\infty,\infty)$ に近づくとき,各々のケースについて,$(z_1,z_2)$ の距離 $|z_1-z_2|$ に関する,i) 増大オーダー;ii) 減少オーダー,其々を有する完全漸近展開を導出することに成功した.結果は現在,論文 "Transformation formulae and asymptotic expansions for double non-holomorphhic Eisenstein series of two complex variables" として執筆中で,欧文学術雑誌に投稿(速報版は,K{\^o}ky{\^u]roku, R.I.M.S. に掲載)の予定である; III) 種々のゼータ関数に付随する完全漸近展開:この研究の方向性では,種々のゼータ関数に対して完全漸近展開の「生成機序」の解明を実行し,一定程度の成果が得られている.結果は現在,論文 "Complete asymptotic expansions associated with various zeta-functions" として纏められ,欧文学術雑誌に出版予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定であった,「研究実績概要」に記した課題 I) について,Lerch ゼータ関数の種々の積分型変換に関しては,ほぼ満足すべき形の完全漸近展開が導出されているとともに,今後のこの方面の解明に向けての示唆的な知見も種々得られており,おおむね順調な研究進展と考えられる.また,同課題 II) についても,導出された2複素変数2重非正則 Eisenstein 級数の完全漸近展開からは,その一つの応用として,特異点の近傍での当該関数の挙動解明への新たな知見が得られるなど,今後の解明に向けての有用性も期待される.以上により,本研究は概ね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績概要」に記した,課題 I) について,今後は pivotal parameter $s$ の「多変数化」が大きな研究テーマとなるため,当面は,この方向での手掛かりとなる研究事実の集積を行いたい.また,II) の研究の方向性では,導出された完全漸近展開が,当該関数の性質への feed back をもたらすといった,様々な応用を有する可能性も想定される.そこで,漸近展開の応用可能性を念頭に置きつつも,2複素変数2重正則・非正則 Eisenstein 級数の2つのクラスを広範包括的に扱える手法の開発を中心テーマとして本研究を推進したい.
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Causes of Carryover |
学内・学外業務が極めて多忙化した関係で,本研究課題の追及に振り向ける時間が潤沢に確保できず,2019年度の使用額が例年に比して少額だったため,次年度使用額が発生した.次年度は,これまでの状況が多少改善され,本研究課題追及のために時間及びエネルギーを投入できる環境が整うものと見込まれる.今後は,通常どおりの研究資金の使用も可能となるため,資金残余額の使途を,概ね,設備備品費40%;消耗品費20%:旅費20%;人件費10%:その他10%,との分配比率において設定し,本研究課題の解明及び総括を進捗させる予定である.
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Research Products
(4 results)