2019 Fiscal Year Research-status Report
CM型代数曲線の族、多重ガンマ関数、スターク予想、及び関連する数論的諸問題
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17K05183
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
加塩 朋和 東京理科大学, 理工学部数学科, 講師 (10403106)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Stark単数 / Gross-Stark単数 / (p進)多重ガンマ関数 / (p進)CM周期 / p進Hodge理論 / 絶対フロベニウス作用 / 冪整基底 / Weberの類数問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、これまでStark予想とCM周期や多重ガンマ関数との関係、及びその周辺分野を中心に研究を行ってきている。ある条件下において、Stark予想とは、Stark単数と呼ばれる代数体の単数を表す明示的な予想式となり、類体構成問題(Hilbertの第12問題)に対する部分的な回答を与える問題である。今回、さらに“代数体の生成元の研究”から一歩進み、代数体の整数環の生成元を求める「冪整基底問題」や、代数体の類数を明示的な単数群を用いて解析する「Weberの類数問題」に対し、それぞれ本学の博士後期課程学生である関川隆太郎氏、吉﨑彪雅氏との共同研究を開始している。 本年度の研究実績は、すでに電子媒体で公開されていた論文2部の紙媒体での出版と、招待講演2回、出版予定の報告集原稿1部、そして投稿中の論文3部で発表している。 これら発表物の主な内容は、Barnesの多重ガンマ関数の特殊値の代数性に関する自身の結果のp進版への拡張、吉田敬之氏と行った(p進)CM周期に関する共同研究で得られた予想式の精密化、Fermat曲線上の絶対フロベニウス作用に関するColemanの公式の再解釈とその応用、そして、関川氏との共同研究で得られた3次アーベル体の冪整基底の存在・非存在の特徴付け、となっている。吉崎氏との共同研究の成果はまだ発表段階にはないが、関連する結果を吉崎氏が単著論文の投稿準備中であり、今後の発展が十分期待できる内容である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の最終的な目標は、これまで別々の問題と考えられてきた、CM周期に関する吉田予想と、代数体の単数に関するStark予想の間の関係を明らかにし、統一的な答えを導くことにある。そのため、これまで各予想とそれらのp進類似に関する研究を行い、いくつかの結果を得ることができた。特に本年度までに、Stark予想とそのp進類似であるGross-Stark予想、及び、吉田予想のp進類似達の共通の精密化を与える予想式の定式化を完成させることができた。この研究結果はいくつかの研究集会において発表し、現在雑誌投稿中である。なお、この研究に先駆けて、この予想の特別な場合が、Rohrlich氏とColeman氏が与えた古典的な公式と、現在のp進Hodge理論を組み合わせることで導かれることを発見していた。このうちColeman氏の公式は、古典的にはFermat曲線上の絶対フロベニウス作用の直接計算により示されていたが、直接計算によらない別証明を与えることができた。この研究結果も口頭発表し、雑誌投稿中である。 これらに加えて、本年度は、本学博士後期課程学生の関川隆太郎氏と(相対)冪整基底に関する共同研究を行った。冪整基底問題は代数体の整数環の明示的な生成元を与える研究であり、類体構成問題の精密化であると捉えている。これまでに研究成果として、3次アーベル体の冪整基底の存在・非存在の特徴付けを得ることができ、現在雑誌投稿中である。今回の結果の大部分はGras氏の古典的な結果の再解釈となってはいるが、証明手法が整備されたことにより、今後の応用・発展が期待できると考えている。実際、関川氏はこの共同研究に関連して、2部の単著論文を雑誌投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
直近の課題としては、現在投稿中の論文の出版と、それらの応用に関する研究を計画している。具体的には、以下2点を目標としている。 1.Coleman氏の公式の別証明に関する研究中に得られた手法を応用して、より一般の場合でCM型の代数曲線上の絶対フロベニウス作用に関して何か言及できるのではないか、と考えている。Fermat曲線の場合は、すでに示すべき式がColeman氏により明示的に与えられていた中での別証明であったが、一般の場合にはこのような明示公式は存在しないので、まずは示すべき式の定式化から始める必要がある。この定式化には、吉田敬之氏との共同研究で得られたp進CM周期とp進多重ガンマ関数の特殊値の間の予想式や、続けて研究代表者が行った予想式の精密化が重要な働きをすると考えている。 2.本学博士後期課程学生の関川隆太郎氏との共同研究を通して、(相対)冪整基底問題は、ある特別な場合には、あるイデアルの単項イデアル性と、その単項イデアルの生成元に対する加法的Hilbert90の成立の2ステップに分けて考えられることを発見した。さらに前者は類数に関する「種の理論」が絡んでくる。実際に投稿中の論文でも、種の理論に用いられている代数的整数論的な議論が多様されている。今後さらに未解決の場合への応用を目指す。なお、種の理論は岩澤理論的な現象への応用が知られており、本研究との関係が発見できれば、大変興味深いと感じている。 また、1,2に加えて以下の計画もある。 3.本学博士後期課程学生の吉﨑彪雅氏とWeberの類数問題に関する共同研究を行ったことで、円単数群や楕円単数群などの、単数群の明示的な表現とこの方面の問題が深く関係することを知ることができた。Stark予想は、より一般の場合に明示的な単数に関する予想式を与えているので、今後関連性などを探っていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス流行の影響により、研究代表者及び共同研究者の学会発表が複数キャンセルになった。加えて登校自粛などにより、思うように研究が遂行できず、物品の購入なども遅れている。 翌年度は、これらの遅れを取り戻すべく、より積極的に研究活動を行いたい。
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