2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K05184
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
小山 信也 東洋大学, 理工学部, 教授 (50225596)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | オイラー積 / ゼータ関数 / 深リーマン予想 / セルバーグ・ゼータ関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画に記載した初年度の目標のうちの「コンラッドの定理の拡張」と,二年目の目標として記載していた「極が無いセルバーグ・ゼータ関数に対する深リーマン予想の証明」について進展を得た. 第一の目標にある「コンラッドの定理」とは,臨界領域内でのオイラー積の収束性と素数定理の誤差項の改善との間の同値性を主張するものである.これをセルバーグ・ゼータ関数に対して拡張する場合,オイラー積の収束性と素測地線定理の誤差項の改善との間の関係が興味の対象となる.当初,オイラー積の収束を仮定することにより,素測地線定理の誤差項の改善が得られるだろうと私は考え,それに向けた研究を行っていたが,数か月の検討の結果,それはできなかった.理由を分析したところ,セルバーグ・ゼータ関しては,すでに知られている素測地線定理の誤差項が,オイラー積の収束性よりも強いであろうとの結論に達した.逆に言うと,すでに知られている素測地線定理の誤差項から,オイラー積の収束性が示せるはずだということになる.この考察が今回の大きな発見であった. したがって,コンラッドの定理の拡張という第一の目標は,実は,次年度の目標である「深リーマン予想の証明」に直結することがわかった.そこで,オイラー積の収束性の直接証明を試みた結果,コンパクトリーマン面に対し,自明表現を含まないような任意のユニタリ表現を付けたセルバーグ・ゼータ関数のオイラー積が,実部3/4以上において,リーマン予想仮定の下に収束することを証明した.この結果は,標数0において深リーマン予想に向けた初の業績であり,国際的な主要学術誌に投稿予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画として掲げた初年度の二つの目標のうち,一つ目の「コンラッドの定理の拡張」に関して完全に解決し,それを発展させた形で二年目の目標の一部を先に達成した.一方,初年度の目標のもう一つである「超グラフの構成」については,慶應大学の木村太郎氏との共同研究により,メールによる打合せならびにセミナーの実施により議論を重ね,ある程度の結果を得ているが,論文の出版には至っていない. 以上のことから進捗状況をまとめると,初年度の目標を達成できた部分と達成できなかった部分がある一方で,二年目の目標を先取りして達成したことになる.したがって,総合評価としては,全体としておおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の二つの目標のうち,達成できていないのが「超グラフの構成」である.しかしこれは,本研究全体の中においては主目的ではなく,いわば傍系の副産物としての研究なので,二年目以降は必ずしもこれにこだわることなく,本来の目標である「深リーマン予想の証明」を進めていきたいと考えている. 具体的には,二年目の目標として掲げた「極が無い場合の深リーマン予想」を,より一般の群に対して証明することが,直近の課題となる.さらに,三年目の目標として掲げた「極がある場合の深リーマン予想」についても,ある程度の考察を始めている.二年目に先取りして結果が出る可能性もあるので,極が無い場合と同時に研究を推進して行きたい.
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Causes of Carryover |
次年度使用額は申請時点での研究計画の通りであり,申請した計画に基づいて研究を遂行する予定である.
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Research Products
(4 results)