2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K05184
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
小山 信也 東洋大学, 理工学部, 教授 (50225596)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リーマン予想 / 深リーマン予想 / ゼータ関数 / セルバーグ・ゼータ関数 / オイラー積 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的のうち,「深リーマン予想を数論的多様体の場合にセルバーグ・ゼータ関数に対して定式化し,その証明を行うこと」に関し,2018年度に,ほぼ完全に達成することができた. まず,セルバーグ・ゼータ関数が正則である場合,実部が3/4以上の半平面において,オイラー積が収束することを証明した.臨界領域内におけるオイラー積の証明に成功したことは,これまでは,私と黒川信重氏,木村太郎氏の共同研究により,2013年に標数正の一変数関数体上でのみ示されていたが,標数0のゼータ関数に対して証明されたことはなく,画期的な結果であると言える. さらに,セルバーグ・ゼータ関数が1に極を持つ場合,すなわち,表現が恒等表現を含む場合,オイラー積は臨界領域内で発散することは知られているが,虚部を無限大に飛ばした際のオイラー積の挙動を,素測地線定理の誤差項の評価(すなわち,ラプラシアンの第一固有値の評価)を用いて完全に表すことに成功した.すなわち,オイラー積の発散の様子と,素測地線定理の誤差項評価との関係を,完全に解明したということである.この研究は,赤塚宏隆氏によるリーマン・ゼータ関数の深リーマン予想の,セルバーグ・ゼータ関数版と解釈することができる.実際,赤塚氏の研究はラマヌジャンの手法を用いていたが,本研究においてもラマヌジャンの方法を紐解き応用することにより,オイラー積の挙動を求めている.したがって,この事実により,本研究の目的を完全に達成したものと言える. なお,以上の研究成果は論文としてまとめ,現在,「Annals of mathematics」に投稿中・査読中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に進展していると言える理由は,セルバーグ・ゼータ関数に対する深リーマン予想が,ほぼ解明できたと考えられるからである.
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Strategy for Future Research Activity |
実部が3/4以上の領域については,オイラー積の収束も含めてセルバーグ・ゼータ関数のオイラー積の挙動を解明できたが,実部が3/4未満の領域については,未解明な部分が多い.これは従来からの未解決問題である素測地線定理の誤差項の改良に帰着する問題であるため,完全な解決は困難と思われるが,本研究の今後の期間を通して取り組んでいきたい.
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Causes of Carryover |
物品費として消耗文具等を10万円程度購入する計画であったが,2018年度の研究計画に必要な経費を執行し、若干の残額が生じた.この分は,次年度に旅費として使用する.
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Research Products
(2 results)