2017 Fiscal Year Research-status Report
Compactification of the moduli of abelian varieties over an integer ring
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17K05188
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中村 郁 北海道大学, 理学研究院, 名誉教授 (50022687)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | モジュライ空間のコンパクト化 / アーベル多様体の退化 / アーベル多様体 / レベル構造 / ハイゼンベルグ群 / ウェイユ対形式 / 悪い素点 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者は、非可換レベル構造つきアーベル多様体のモジュライ空間の基礎環$Z[\zeta_N,1/N]$上のコンパクト化$SQ_{g,K}$を構成し、Hilbert点の安定性を証明した(1999)。ただし、$K$は非退化交代2次形式を持つ有限群を表し、アーベル多様体のレベル構造を指定する。$N$は群$K$の位数を表す。基礎環が$Z[\zeta_N,1/N]$となっているのは、$N$を割る素数$p$(悪い素数という)の体の上ではモジュライ空間が構成できていないことを示している。さらに、同じ基礎環$Z[\zeta_N,1/N]$上に、第二のコンパクト化$SQ^{\rm toric}_{g,K}$を構成し, $SQ^{\rm toric}_{g,K}$から$SQ_{g,K}$への双有理全単射写像を構成した(2010)。これは、二つのモジュライ空間はほぼ同じであることを示している。残る主要な問題は基礎環$Z[\zeta_N]$上にモジュライ空間を延長することである。いいかえれば、$N$を割る素数$p$の体の上でもモジュライ空間を構成することである。上の二つのどちらが延長できるのか大変微妙な問題であった。現在進展中の研究で、第二のモジュライ空間$SQ^{\rm toric}_{g,K}$を基礎環$Z[\zeta_N]$上への拡張する理論が、完成の方向で進んでいる。アーベル多様体だけのモジュライ空間を基礎環$Z[\zeta_N]$上への拡張する理論はもう少し容易であるが、その場合でも、悪い素点でのモジュライ空間の構造を具体的に調べることは困難かつ重要である。そのために、悪い素点で可換有限群スキームであるハイゼンベルグ群のウェイユ対形式を記述しなければならない。その研究に最近進展があり、1次元のKatz-Mazur理論を精密に記述できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調に進展している。レベル構造を持つアーベル多様体のモジュライ空間およびそのコンパクト化の研究が進んでいる。主たる問題は悪い素点の近くでの研究であるが、Katz-Mazur理論をより精密に記述するために、レベル群が$(Z/3Z)\oplus(Z/3Z)$の場合にすべて具体的に計算で求めた。その後、Dieudonne理論の適用により、飛躍的に研究が進展した。この局面では、有限群スキーム$K=(Z/p^nZ)\oplus(Z/p^nZ)$に対して以下の二つの問題を解決することが重要であった。(1)$K$のウェイユ対形式$e_W$をDieudonne理論を用いて、正確に記述すること、(2)十分な切断の集合(full set of sections)が与えられたとき、ノルム多項式のすべての係数を正確に求めること。これが1次元の場合だけであるが、完全に解けた。(1)は、Dieudonne理論によれば、準偏極を記述することに相当するが、より精密なRiemann形式ないしChern類を古典的な複素数体上のRiemann形式ないしChern類に近い形で記述することが必要になる。最終的には、すべての$n$について一斉に($p$進的に)ウェイユ対形式が有限群スキーム$(Z/p^nZ)\oplus(Z/p^nZ)$上の多項式として得られる。この場合には、レベル構造を持つ楕円曲線(アーベル多様体)のモジュライ空間から楕円曲線のモジュライ空間への写像のファイバーを完全に記述でき、その位数(逆像の点の個数)が、悪い素数の場合も含め常に$\SL(2,\bZ/N\bZ)$の位数に等しいことが分かる。さらに、2次元以上で、悪い素点でのモジュライ空間の構造を決定することを目標に、研究を継続中である。そのほか、種数3の曲線とテータ因子の関係について進展があり、論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中の研究を同じ方向で進めて、ウェイユ対形式の論文および種数3の曲線の論文を完成する。そのあと、ふたたび、モジュライ空間のコンパクト化の論文の執筆を継続する。繊細な問題なので精密に書き上げていく必要がある。
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Causes of Carryover |
計算機が故障したので当初予定が狂いましたが、その後は出張を短くして節約しました。残額は少額なので、出張旅費の一部に充当します。
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Research Products
(1 results)