2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K05199
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
伊藤 公毅 大阪電気通信大学, 共通教育機構, 特任准教授 (30456842)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | q差分加群 / q差分ド・ラームコホモロジー / q差分サイクルのホモロジー / ジャクソン積分 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)これまで、射影直線上のq差分加群、q差分ド・ラーム理論、q差分サイクルのホモロジー論の整備を行ってきた。「q位相」なるあるグロタンディーク位相の入った空間を導入し実現した。これらについての発表は準備中である。また、リーマン・ヒルベルト対応も定式化できた。同様の対象についてトーリック多様体上においても考察可能であるとの見通しであったが、これについてその枠組みは、ほぼ整備できた。 (2)これまで、射影空間の様なトーリック多様体をこえる多様体上でq差分加群を考察するには困難があった。一方で、楕円超幾何積分はq差分ド・ラーム理論で捉えられるべきものであるということは、野海氏らにより指摘されていた。この場合のq差分ド・ラーム理論は楕円曲線上のq差分加群のド・ラーム理論として得られることを期待するのは自然であるが、これを「乱視的位相」なるあるグロタンディーク位相を導入することで可能にすることができた。これについての発表は準備中である。 (3)Scholze氏が指摘するように、「形式的」q差分ド・ラームコホモロジーは、(1)(2)よりもひろく整数環Z上のスキームで定義できる。これを具体的に確認した。 (4)基本群のq変形についてまだ知られていない。ここでは、Chenによる反復積分と基本群のq版からのアプローチを見出した。q差分サイクルのホモロジー論の整備に際して、q差分形式の「積分」を既に得ている。これと同様にして反復積分も定義することができる。これを用いて、基本群の(Malcev完備化の複素数体C上の)群環のq変形を得よう、という試みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画当初は、トーリック多様体上でのq差分加群のみに照準をあわせていたが、より広いクラス(アーベル多様体、より一般に格子Z^nが作用する複素多様体、形式q変形ならばZスキーム)において論を展開する余地のあることが明らかになってきた。これにより、素直な期待(楕円超幾何積分が「楕円曲線上のジャクソン積分」であること、ド・ラーム理論の形式q変形)に応えられるようになってきた。これは、大いなる進展であると同時に、計画の拡大を意味し、当初計画より多くの時間が必要となった。その結果、これまで準備してきた枠組みの変更が生じ、成果の取り纏めをやり直すこととした。この為、論文等による発表の作業について、大きな遅れが生じている。 また、計画においてリーマン・ヒルベルト対応の定式化や、基本群の位置付けを明確にすることは中心的であるが、もっとも見通しのたたない点でもあった。この点について前者は、構成可能層の代わりに連接擬定数加群を考えることで、後者については、基本群のMalcev完備化の群環のq変形(ということはひょっとすると量子群)として位置づける、ということで見通しがたった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた成果(射影直線および楕円曲線上のq差分加群、q差分ド・ラームコホモロジー、q差分サイクルのホモロジー)について、論文、講演、またそれらを受けての国内外での研究討議により発信してゆく。並行して以下を推進する。 (1)トーリック多様体、アーベル多様体上での枠組みが整ったことをうけて、各種命題を詰める。 (2)リーマン・ヒルベルト対応について詰める。 (3)反復積分の理論を整備し、基本群のq変形を得る。
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Causes of Carryover |
所属機関を異動したことに伴い、計画当初の見通しに比して2019年度の国内出張がすくなかった。一方で、2020年度は計画当初にはなかった海外出張が望まれるため。 (ただし、コロナウィルスの影響があり、この先の計画について不透明な点もある。)
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