2021 Fiscal Year Research-status Report
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17K05199
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
伊藤 公毅 大阪電気通信大学, 共通教育機構, 特任准教授 (30456842)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | q解析 / リーマン・ヒルベルト対応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はq解析学におけるリーマン・ヒルベルト対応がテーマである. q差分作用素と函数が生成する環をD_q, 擬定数(qシフトで不変な函数)のなす環をC_qとするとき, リーマン・ヒルベルト対応とは, あるD_q加群とあるC_q加群の対応である. しかし実際には, D_qやC_q, それ上の加群は何らかの空間上の層として定義されるべきものである. (すくなくとも, C_q加群は「図形の位相」を反映するデータを持つべきものである.) 本研究は, まず「何らかの空間」を定義することからはじまる. 以下, 1次元射影空間Pの場合について述べる. qシフトで不変かつ1/qシフトで不変な開集合を考えるというのが, まずはじめに考えられることである. しかし, この位相で(0, ∞以外で)局所的に考えた場合, 線形なq差分方程式は全て定数係数のq差分方程式と同等になってしまう. (1階の場合, f(qt)=f(t)と同等になる.) そこで, もう少しだけ開集合を増やすことを考える. 現在, 幾つかのやり方を得ている. (一方で, それぞれ一長一短で, どれにすべきかわかっていない.) これまで, 正則函数係数のq差分形式のジャクソン積分や周回積分しか考えられてこなかった. q差分ドラーム複体のドルボー分解を考えようとすると, 微分可能な函数係数のq差分形式が現れる. ドルボー分解による2重複体を1重化すると微分可能函数版q差分ドラーム複体というべきものだが, ここでの1形式は, q差分形式と通常の意味での(0,1)形式の直和で与えられる. この1形式の積分等の定義を与えることで, ジャクソン積分, 周回積分双方をふくむホモロジーサイクルのq版が見えるようになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)本研究の出発点である位相空間の設定について, 計画当初用いていたものを大々的に変更したため, これまで行ってきたものについて全て書き直す必要が生じたためである. また, これまでの設定と新しい設定とで, どちらがより適切であるのかの比較検討の必要も生じている. 更には, 折衷案も考えられ, それぞれ一長一短である. (2)q差分加群の概念までは(いくつかの位相によるやり方のどのやり方でも)あるていど整然と話が進む. しかし, 「擬q差分作用素」とでもいうべき超局所解析的(あるいは余接束にからむ)考察が極めて困難である. ここに関連する事項(たとえば特性多様体)が得られない. (3)コロナ禍もあり, 研究上の討議の機会が殆ど無くなってしまったことも, 遠因になっている. 上記(1)については他者の意見は効果的であると考えられる. また, (2)については, とにかくあらゆる角度からの検討を要する. 従って, いろんな研究者から話をきくことが効果的と考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)まずは早急に, 位相の与え方を固める必要がある. そのために, 他者と議論をすることが有益と考えられる. それをふまえ, ここまでで得られている結果を, すべて書き直す. ひとまず, 1次元の場合にとりまとめ論文とする. (2)2次元以上の考察を本格化する. 偏q差分方程式にたいするq差分加群の理論の基礎部分(これは以下で述べる(3)の準備), またq差分加群のファミリー版についての基礎理論の整備をおこなう. 特に, q超幾何函数をこの観点から記述する. (3)q解析におけるコーシー問題について考察する. 特に, コーシー・コワレフスカヤの定理のq解析版が一つの目標である. (これは(3)の準備でもある) (4)(3)を主張する条件として「ホロノミックの全うな」定義を見出す. さらに, 特性多様体の「あるべき姿」を模索する. (5)楕円超幾何函数へ応用すべく, アーベル多様体上のq差分加群の理論を整える.
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Causes of Carryover |
当初計画していた, 海外出張, 国内出張が軒並み中止やオンラインとなったことが主たる理由である. 今年度はすでに, 夏の研究集会が開催される見込みとなっている. これらに出席する予定である. また, このコロナ禍数年で行った研究について, ほぼ誰とも討論しておらず, ここ数年で得られた知見を他者と共有すべく, 方々に出張するつもりである.
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