2017 Fiscal Year Research-status Report
Study on Fano varieties defined over an algebraically closed field in positive characteristic
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17K05208
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
齋藤 夏雄 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (70382372)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 正標数 / 有理二重点 / ファノ多様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,3次元代数多様体に現れる1次元の標準特異点が有理二重点の非自明な変形として生じるという正標数特有の現象に注目し,有理二重点の変形空間において中心ファイバーと同型な特異点が生じるファイバーを持つ点がどのような軌跡をなすかについての研究を中心に行った.標数3以上の場合は先行研究で構造がほぼ解明されているので,残された標数2の場合について局所的な計算を実行した.すでに一部は以前から計算を進めていたが,今年度は非常に複雑なD型を完全に調べた結果,A,D,Eのすべての型に対して,こうした軌跡の次元,およびその局所的な方程式を求めることができた.さらに,変形空間においてTjurina数τがなす階層構造についても調べ,中心ファイバーとτが等しい特異点がファイバー上に存在するような変形空間内の軌跡(最大τ軌跡)についても計算を行った.E_8^0, E_6^0型など,最大τ軌跡内で各特異点に対する軌跡が線形な階層構造を持つものがある一方,E_6^1型のように最大τ軌跡が既約でない場合も起こることが明らかになった. 一方,正標数の代数的閉体上定義されたデル・ペッツォ曲面および3次元ファノ多様体でF分裂しないものについても研究を行った.デル・ペッツォ曲面については次数1の場合が残されているが,次数2以上の場合のような簡明な特徴づけを得ることは難しく,引き続き調査が必要である.また3次元ファノ多様体については,これまでに得られた具体例から,多様体上の直線と関連があると予想しているが,まだ具体的な成果は得られていない. 研究にあたっては,国内外の研究者と議論および情報収集を行うことを目的として,東京理科大学で行われたシンポジウムで講演を行ったほか,高知大学,法政大学などで行われたワークショップや研究集会にも赴き,他の参加者と活発な議論を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は正標数の有理二重点の変形空間について特に力を入れて研究を行い,その結果,標数2のすべての有理二重点の型に対して変形空間内における等特異変形空間の構造を明らかにすることができた.特にD型の場合はきわめて計算が煩雑で長い時間を要するものであっただけに,その等特異変形空間を完全に記述できたことは大きな進展と言える.さらに各特異点の最大τ軌跡についても計算を行った結果,当初の想定を超えていくつかの特異点についてその階層構造を具体的に記述することができた. 一方,F分裂性を持たないデル・ペッツォ曲面および3次元ファノ多様体の特徴づけについては,具体例の計算などで予想の傍証を得られたものの,全体としては大きな成果は得られなかった. 以上のように,研究内容によって進捗状況に差は出ているものの,全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
局所的視点からの研究として,正標数の有理二重点の変形空間の構造を引き続き調べる.すでに等特異変形空間についてはほぼ解明できたので,特に複雑な構造を持つと思われるD型やザリスキタイプでないE型について最大τ軌跡がどのような階層構造を持つかを調査したい. 一方,大域的視点からの研究として,3次元ファノ多様体の直線のヒルベルトスキームに注目することで,直線の多さとF分裂性との間に何らかの関連がないかを調べる.また,次数1のデル・ペッツォ曲面についても,有理楕円曲面の分類から研究を進めたいと考えている.さらにこれと並行して,小平次元1の準楕円曲面の多重標準線形系から定まる写像がファイブレーションの構造射をいつ与えるかという問題についても調査を行う.
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Causes of Carryover |
次年度使用額として計上したのは978円とわずかであり,交付された助成金はほぼ計画通り執行したと考えている.
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