2017 Fiscal Year Research-status Report
代数多様体上の曲線の変形障害とヒルベルトスキームの研究
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17K05210
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
那須 弘和 東海大学, 理学部, 准教授 (30535331)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヒルベルトスキーム / 変形 / 障害 / K3曲面 / ファノ多様体 / ヒルベルト旗スキーム / 退化 / 非被約成分 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主な研究実績は以下の通りである: 1. 指数1の任意の非特異3次元ファノ多様体に対し、その上の非特異連結曲線のヒルベルトスキームに生成的に被約でない既約成分(generically non-reduced component)が存在することを証明した。 2. 非特異3次元ファノ多様体のヒルベルト旗スキームが、非特異かつ期待次元を持つための明示的な条件を得た。 3. 指数1の3次元ファノ多様体上の退化曲線が安定的に退化する(stably degenerate)ための十分条件を与えた。 Vをピカール数1の非特異3次元ファノ多様体とし、その指数をrとする。r=4の場合にはマンフォードの例(1962)により、r=3とr=2の場合には向井・那須の結果(2009)により、V上の非特異連結曲線のヒルベルトスキームが生成的に被約でない既約成分を持つことが知られていた。r=1の場合も那須(2017)により部分的な結果(g=3)が得られていたが、このr=1の場合に完全に解決し(結果1)、マンフォードの例をピカール数1の非特異3次元ファノ多様体へと一般化した。この結果は佐藤栄一氏の与えた問題(2007)への解答となる。多様体上の円錐曲線をうまく利用することにより、埋め込み変形が障害を受けるような被障害曲線(obstructed curve)の族を構成した。一方、ファノ多様体のヒルベルト旗スキームの研究にも取り組んだ。結果2を応用することにより、退化曲線の障害性と安定性について調べ、対応する点におけるヒルベルトスキームの次元を決定した(結果3)。これら結果について整理し、プレプリント「Obstructions to deforming curves on a prime Fano 3-fold」を投稿した(arXiv:1804.08362)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
残っていた指数1の3次元ファノ多様体のヒルベルトスキームの問題を解決した。一方で曲線の安定的退化の問題については、技術的な問題が残り、全ての退化曲線を取り扱うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
非特異3次元ファノ多様体のヒルベルトスキームの研究が一段落したので、今後は多様体に緩やかな特異点を許して考察したい。
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Causes of Carryover |
(理由)研究集会への参加が予定より少なかった為に未使用額が生じた。 (使用計画)研究集会への参加と専門図書の購入を計画的に行う。毎年札幌で開催されているK3曲面・エンリケス曲面の勉強会への参加を計画している。
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