2018 Fiscal Year Research-status Report
代数多様体上の曲線の変形障害とヒルベルトスキームの研究
Project/Area Number |
17K05210
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
那須 弘和 東海大学, 理学部, 准教授 (30535331)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ヒルベルトスキーム / 変形 / 障害 / エンリケス曲面 / エンリケス・ファノ多様体 / ヒルベルト旗スキーム / 非被約成分 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度にはマンフォードの与えた空間曲線のヒルベルトスキームの非被約成分の例をピカール数1の任意の非特異3次元ファノ多様体のヒルベルトスキームの場合に一般化した。本年度はその続きとして3次元多様体に特異点を許し、エンリケス・ファノ三様体(EF3)上の曲線の変形障害について研究を行なった。主な研究実績は以下の通りである: 1. EF3上の非特異連結曲線のヒルベルトスキームに生成的に被約でない既約成分(generically non-reduced component)が存在するための十分条件を与え、特に種数が9と13のEF3の場合に例を構成した。 2. EF3のヒルベルト旗スキームが非特異かつ期待次元を持つための明示的な条件を与えた。
EF3はエンリケス曲面を超平面切断として含む射影多様体であり、全てのEF3は孤立特異点を持つことが知られている(Conte-Murre)。EF3上の曲線のうち、エンリケス曲面に含まれるような曲線の変形障害について研究を行い、曲面上のハーフペンシルを利用して、ヒルベルトスキームの非被約成分の存在を示した(結果1)。また非特異ファノ多様体(とK3曲面)のヒルベルト旗スキームに関するこれまでの研究を応用し、EF3の旗スキームの非特異性と次元に関する結果を得た(結果2)。論文「Obstructions to deforming curves on a prime Fano 3-fold」が出版された。京都大学の向井茂氏の退職を記念する国際研究集会「Algebraic Geometry and Moduli Theory」を金銅誠之氏、中山昇氏、大橋久範氏と共同で主催し、Beauville氏、Debarre氏、Shepherd-Barron氏などが講演を行なった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特異ファノ三様体のヒルベルトスキームに関する研究に着手した。エンリケス・ファノ三様体とエンリケス曲面のペアを考察することにより、ヒルベルトスキームの非被約成分に関する研究を進めることができた。非特異ファノ三様体とK3曲面のペアとはまた異なる設定で、ヒルベルトスキームの性質について良く似た現象を観察することができたことが面白いと感じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
エンリケス・ファノ三様体(EF3)のヒルベルトスキームに関する研究をさらに進めたい。特にEF3の超平面切断に含まれる曲線(退化曲線)の障害性、および対応する点におけるヒルベルトスキームの次元を決定したい。代数多様体の間の射とヒルベルトスキームの間の関係について理解することを目標に研究を進めたい。
|
Causes of Carryover |
未使用額が生じた理由の一つとして、以下の研究集会を企画し参加者の旅費に充てることを計画していたが北海道胆振東部地震の発生とその影響により開催中止となったことが挙げられる。 「Special Seminar on K3 surfaces and Lattice theory」 Sapporo Satellite Campus, Hokkaido University of Education, September 10--12, 2018 次年度は最終年度であるため、計画的な予算の執行を心がけたい。
|
Research Products
(9 results)