2018 Fiscal Year Research-status Report
ミラー対称性とモジュライ空間の幾何学の関連の理解の深化
Project/Area Number |
17K05214
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
秦泉寺 雅夫 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (20322795)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ミラー / 擬写像 / モジュライ空間 / 位相的シグマ模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はミラー対称性の啓蒙活動として重要な意味を持つ、複素幾何学の解説を主題とする書籍の執筆を行った。
この本は、まず実多様体論の解説とその位相幾何学の展開に必要なホモロジー論と微分形式のド・ラムコホモロジーの解説から始まる。その後、複素関数論を導入し、複素多様体を導入する。そこでは、正則性により複素多様体には実多様体に比べて「剛性」という性質が加わることが強調される。更に、この剛性により複素多様体上の微分形式が実多様体のそれとどのように異なるかが解説され、その後正則ベクトル束の理論や層の理論が解説される。最後に、これらの道具を用いてミラー対称性でも使われる複素多様体の複素構造の変形理論を簡単に解説して終わる。なお、この本は2019年の夏頃に出版される予定である。
その他に、院生の指導の一環として、位相的シグマモデルをボットの留数定理の経路積分を用いた証明に応用する研究も行っている。また、私が以前に提示した擬写像のモジュライ空間をトーリック多様体として厳密に構成する問題も院生に取り組ませている。なお、これらは進行中の研究でできるだけ2019年度中に発表したいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
啓蒙活動に関する書籍の出版は予定通りに進行している。射影超曲面のミラー定理の幾何学的証明に関しては、論文を現在投稿中である。擬写像のモジュライ空間のトーリック的構成の問題は研究室全体で取り組む体制が出来上がりつつある。まだ手をつけていない課題は高い種数のミラー定理に関する問題だけである。
|
Strategy for Future Research Activity |
進行中の研究に関しては、このまま進めて行って問題ないと言える。高い種数のミラー定理に関する問題については、書籍の出版が一段落したこともあり、来年度以降落ち着いて取り組めると考えている。
|
Causes of Carryover |
書籍の執筆で忙しく、思うように出張することができなかった。来年度は積極的に海外出張するなどして、研究発表の活動を行いたい。
|