2018 Fiscal Year Research-status Report
pursuing global essences of manifolds with geometric structures via special surgeries
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17K05236
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
足立 二郎 北海道大学, 理学研究院, 理学研究院研究員 (20374184)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 接触構造 / グルサ構造 / 柔軟性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の大きな目的は,特殊な手術の視点から接触構造やその一般化などの幾何構造に関する微分トポロジーの統一理論の創生を目指すことにある.2018年度に行った研究では,前年度に引き続きGoursat構造を持った多重ラウンドハンドルを用いたGoursat多様体の手術の研究を行った.さらにその観点から,特にGoursat多様体が4次元のEngel多様体の場合に,Engel構造の柔軟性に関する研究を行った. 3次元多様体上の接触構造とは,2次元の平面場で最も積分不可能なものである.Goursat構造はその拡張であり,多様体上の2次元の平面場で,Lieかっこ積で次元が1ずつ増えて接束全体まで次元が上がるものである.とくに多様体が4次元のときに,Engel構造とよばれる.大域的な研究はこれまであまりなく,最近急速に研究が進みつつある. 多重ラウンドハンドルとは,通常のハンドルと(高次元)トーラスとの積の形をしたハンドルで,私自身が導入した概念である.ここにうまいGoursat構造のいくつかの例を構成した.どれを標準的なものと考えるべきかを,考察している. 3次元多様体上の接触構造の柔軟性とシンプレクティックラウンドハンドルを用いた手術に密接な関係があることが,私の以前の研究で分かっている.このアイディアの高階の接触構造への拡張が本研究の基本的なアイディアのひとつである.上述の柔軟性の研究はEngel構造への拡張の考察といえる. Engel構造の柔軟性は,近年に研究が始まって活発に研究されている.いくつかの例が提案されている.多重ラウンド手術のアイディアを使って,それらを含む新しいモデルを構成出来ることがわかった. 新たな研究対象に,新たな概念を導入することに,重要な意義を感じている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特殊な手術の方法で,接触トポロジーの概念を一般化して展開していくことが本研究課題の目的である.その意味で,Goursat構造を持つ多重ラウンドハンドルを使った手術を構成して研究の道具としていることは,計画に沿った研究の進展であると考えられる.当初の研究計画では,高次元への応用をもう少し進めることも考えられる.高階への切り替えが少し早いが,Engel幾何学の予想以上の急速な進展に合わせた,適切な対応であると考える.高次元に関しても,いずれ考えたい.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,まずは高階の接触構造であるGoursat構造をもつ多様体の,構造を込めた多重ラウンド手術の方法を用いた研究を推進したい.Engel構造の微分トポロジー的な研究にもうまく適用できそうである.さらに高階なGoursat構造や特殊多重旗構造に対しても,ホモトピー原理の考え方の適用と特殊な手術の関連を考えたい. また,Engel構造に関して,共同研究の課題が持ちあがった.大きな視点からは,本研究課題にも関係があるものであり,これも進めたい. まさにいま動いている分野であり,古典的な知識も必要である.国内外の専門家たちと,直接に議論しながら研究を進めることが必要だと考えている.
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Causes of Carryover |
ほぼ,前年度からの繰越額を次年度使用とすることになった.前年度の理由から分かるように,使用予定額を先送りしたのではなく,予定外のことで使用することが出来るようになった額である.今年度はほぼ計画に従って予算を使用したので,そのまま次年度での使用となった. この研究は現在急速に発展している分野と密接な関係があるので,国内外の専門家たちと直接に会って,議論し情報を交換することが必要である.そのために研究費を使うことが,研究推進に有効であると考える.共同研究の推進や研究結果の公開などの良いタイミングを見計らって,最も効果的に使用することを考えたい.
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