2018 Fiscal Year Research-status Report
カンドルを用いた曲面結び目不変量の幾何的意味の解明とその応用
Project/Area Number |
17K05242
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
田中 心 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (70448950)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トポロジー / 曲面結び目 / 結び目 / カンドル / bridge trisection表示 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度(2018年度)は、カンドルホモロジー理論に於いて新しいチェイン写像を導入し、その性質を詳細に調べた。この研究は東京学芸大学(当時)の橋本悠氏との共同研究である。我々が導入したチェイン写像は「次数を一つ下げる自己チェイン写像」であり、双対を考えて引き戻すことにより「次数を一つ上げるコチェイン写像」が得られる。特に、カンドル2コサイクルからはカンドル3コサイクルが得られる。そこで、カンドル2コサイクルから得られる結び目不変量と引き戻したカンドル3コサイクルから得られる結び目不変量の関係を調べ、両者は等価であることを示した。また、引き戻した3コサイクルから得られる曲面結び目不変量に関して、(コホモロジー類としては非自明である場合でも)不変量の値は自明となることを示した。この結果は現在論文にまとめているところである。
曲面結び目のbridge trisectionの理論についても、引き続き研究を進めた。国士舘大学の新庄玲子氏と共同で、twist-spun 2-knotのbridge trisection表示(より正確には、tri-plane図式による表示)を用いることで、1-twist-spun trefoilの自明性を再証明することができた。また、東京学芸大学(当時)の大峯正己氏と共同で、bridge trisection表示に関する対称性を調べ、twist-spun 2-knotのtwist数の正負の意味を明らかにした。これはLitherlandによる結果の特別な場合であることが分かったが、bridge trisection表示が有効に機能する例として興味深い。
国内外の研究集会やセミナーに出席し、上記成果を発表した。また、専門知識を学ぶと共に、結び目理論研究者たちと議論を交わした。その際の旅費を科研費か ら支出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した実施計画では、曲面結び目のカンドルコサイクル不変量の幾何的意味を明らかにするという目的があった。これ自体はまだ達成されていないが、カンドルホモロジー理論における「次数を一つ下げる自己チェイン写像」を発見し、カンドルコサイクル不変量の振る舞いを解明することができた。この考察自体がカンドル理論において重要な結果であり、また幾何的意味の解明にもつながる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(2019年度)は、曲面結び目のコサイクル不変量の幾何的意味の解明に引き続き取り組む。また、曲面結び目のコサイクル不変量を多重線形形式へ拡張する。 曲面結び目のbridge trisection表示に関する研究もさらに推し進め、カンドル由来の不変量との関係を考察していく。これは交付申請書に記載していない内容 であるが、当該研究課題に取り組む過程で派生して出てきた問題意識である。
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Causes of Carryover |
2018年度春学期に海外渡航を計画していたが、家庭の事情で行くことができなかったため。
2019年度は、交付申請書に記載の実施計画に従って、研究費を使用する予定である。状況によっては、海外から研究者を招聘するなど柔軟に対応する。
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Research Products
(2 results)