2018 Fiscal Year Research-status Report
曲面群の指標多様体の写像類群作用による力学系的分解の幾何学
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17K05250
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
山下 靖 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (70239987)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 双曲幾何学 / クライン群 / 低次元トポロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
曲面Σの基本群πからリー群Gへの表現全体の空間Hom(π,G)には群Gが共役により作用する。この作用による幾何学的不変式論の意味での商空間Xを指標多様体という。この指標多様体を、表現の像が離散群になる部分とそうでない部分に分割すると、前者はΣのG構造の変形の空間とみなすことができる。特にGがSL(2,C)の場合は双曲幾何構造の変形空間であり、重要な研究対象である。また、指標多様体には曲面Σの写像類群が自然に作用し、この作用の複雑さによっても指標多様体は2つに分割される。これら2つの関係は未解明な部分が多い。 上記のSL(2, C)の離散部分群はクライン群と呼ばれる。平成30年度においては、SL(2, C)の要素であって放物型と呼ばれるもの2つによって生成される群をランダムに発生させた場合に、それがどのような確率でクライン群になるか、という問題の研究を行った。まず、放物型のSL(2, C)の要素全体の空間はコンパクトな空間ではないので、そこに幾何学的に意味のある確率密度関数を与えることが問題になるが、これについては先行研究があり、これを採用することにした。すると残りの問題は離散性の判定となるが、特別なSL(2, R)の場合には理論的なアプローチを、より一般のSL(2, C)の場合には計算機実験によるアプローチを行い、それぞれの場合においての確率の評価を得ることに成功した。特に後者の場合においては、本研究代表者が行ってきた離散性判定に関するアルゴリズムを効果的に利用することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画においては、平成30年度に指標多様体内で写像類群の作用による力学系が安定になる部分の研究を行う予定であった。放物型の元で生成されるクライン群に関する研究結果を得ることにより、このような研究を進展させることができた。そのため、上記の区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に得られた研究結果は、2つの放物型の元により生成される離散群を考察することで得られていた。今後はこれをさらに広げて2つの楕円型の元により生成される離散群を考察していく予定である。そのための最初のステップとして、ランダムな楕円型の元を与えるための確率密度関数や、それらに関連した楕円型の元の性質に関する研究を進めて行く予定である。
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Causes of Carryover |
計画していた旅費などについて、先方負担のケースがいくつかあったことなどで、予定額との差が生じたため。計画していた今年度の旅費と物品費(主に書籍購入)に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)