Outline of Annual Research Achievements |
多様体間の写像の特異点や特異ファイバーの振る舞いに関する研究は一般に特異点論と呼ばれ, これにより定義域多様体の位相的な情報を引き出す研究が活発に行われている. 特に, 摂動によって特異点の性質を変えない安定写像を用いた研究は, この目的において成功を収めてきた. 本年度は, 古谷凌雅氏と共同で, 3 次元球面内の双曲絡み目で, 余次元 2 の特異ファイバーをただ一つのみ持つ安定写像を許容するものを完全に分類した. ここで, 向き付け可能な閉 3 次元多様体から実平面への安定写像がその多様体内の絡み目の安定写像であるとは, その絡み目がその安定写像の定置折り目特異点に含まれるときにいう. 余次元 2 の特異ファイバーは II^2 型, II^3 型の 2 種類に分類される. Saeki (1996), Ishikawa-Koda (2017) による先行研究に立脚し, II^2 型の特異ファイバーを持たず, II^3 型の特異ファイバーを 1 本のみ持つ双曲絡み目の特徴づけを完全な形で解決することで上述の分類を完了させた. さらに, 特異ファイバーの位置を具体的に描写し, また, 絡み目の補空間の双曲体積に関する最良の評価を記述した.これらは当研究課題の目標の一つとしてあげていたものを遂行し, 完全な形で解決したものである. 得られた成果は論文にまとめ arXiv に掲載した上で, 査読付き論文に投稿中である. この他, 閉 3 次元多様体のシャドウ複雑度 (Bruno Martelli氏, 直江央寛氏と共同), 非輪状 4 次元多様体のシャドウ複雑度(直江央寛氏と共同), 橋分解の Goeritz 群(井口大幹氏, 廣瀬進氏, 金英子氏と共同), に関する論文が査読付き国際誌から受理され, この一部は既に出版された.
|