2017 Fiscal Year Research-status Report
Matrix/operator analysis (inequalities, mean, majorization) and applications to quantum information
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17K05266
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
日合 文雄 東北大学, 情報科学研究科, 名誉教授 (30092571)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 関数解析 / 作用素 / 行列解析 / 作用素平均 / 量子情報理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
行列・作用素解析の研究と量子情報への応用的研究を行い,所定の成果を得た. M. Lin(中国)との共同研究により,アダマール積と幾何平均に関係して知られた行列の固有値に対するマジョリゼーションを重み付き幾何平均の場合に拡張した. R. Konig(独)とM. Tomamichel(オーストラリア)との共同研究により,行列の固有値のマジョリゼーションを積分による平均を含む形式に一般化し,それを用いて,Golden-Thompsonトレース不等式の多変数版をユニタリ不変ノルムに対する一般的なノルム不等式として証明することに成功した.これによりE. H. Liebの有名な論文(1973)以来の長年の問題であった3個以上の作用素に対するGolden-Thompson不等式に対する一定の解答を与えた. Y. Lim(韓国)との共同研究により,n×n 正定値行列のなすリーマン多様体(負計量空間の典型例となる)上の確率測度のCartan重心(幾何平均の確率測度への一般化)に対するAndo-Hiaiの対数マジョリゼーションを示した.さらに,確率測度の幾何平均による流れに対するCartan重心の軌跡の微分可能性を示し,それを用いて,ユニタリ不変ノルム不等式とLie-Trotterの極限公式を得た. M. Mosonyi(ハンガリー)との共同研究により,量子情報の分野で重要ないろいろな量子f-ダイバージェンスについて組織的に研究した.標準型f-ダイバージェンスと極大型f-ダイバージェンスについて,量子情報路の下での単調不等式の等号条件からリバーシビリティがどの程度成立するかを比較した.これら2つのf-ダイバージェンスの間の大小関係を示した.さらに,α-z-レニィ・ダイバージェンスと呼ばれる一般化されたレニィ・ダイバージェンスについて単調性とリバーシビリティを考察した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の計画として掲げた3つの研究項目のすべてについて,当初の計画通りまたはそれ以上に研究が進展した.量子f-ダイバージェンスに関するM. Mosonyiとの共同研究は時間をかけて80ページの長い論文に纏まり,数理物理の一流誌J. Math. Phys.に出版された.著名な雑誌Ann. Henri Poincareに掲載されたR. KonigとM. Tomamichelとの共著論文では,長年の問題であった3個以上の作用素に対するGolden-Thompsonトレース不等式を一般のユニタリ不変ノルムの不等式として計画した以上に上首尾に証明できた. 行列・作用素の作るNPC空間(負計量空間)と呼ばれるリーマン多様体上のCartan重心に関するY. Lim との共同研究は当初の計画以上に進展しており,下記の平成29年度の研究成果にある2編の論文に加えて,現在投稿中の論文と執筆中の論文が1編ずつある.さらに,当初の計画になかった研究として,J. Lawson(米国)とY. Limとの3人共著で,順序をもつ距離空間上の確率測度に対する確率順序を導入しその性質を調べた論文がJ. Math. Anal. Appl.に印刷中である.この論文は,順序をもつ距離空間上の確率解析の研究において,今後重要な役割を果たすと期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年に実施したCartan重心(幾何平均の確率測度への一般化)の研究を発展させて,一般の多変数および確率測度の作用素平均とそれに関連する作用素不等式の研究を行う.Y. Lim氏(韓国)との継続の共同研究で,距離空間上の確率測度の設定で,Wasserstein距離について縮小性をもつ重心写像の下での確率解析の研究を行う.具体的には,距離空間に値をもつ確率変数に対する条件づき期待値,エルゴード定理,マルチンゲール収束,大偏差原理などの一連の研究を行うものである.別に,瀬尾氏(大阪教育大),和田氏(木更津高専)と,多変数の作用素平均に対するAndo-Hiai型の不等式について系統的な共同研究を行う予定になっている. 量子ダイバージェンスの研究をvon Neumann環上の正規な正線形汎関数に対する量子ダイバージェンスの研究に発展させる.有限次元の行列の場合のM. Mosonyi氏との共同研究を下敷きにして,標準型f-ダイバージェンス,極大型f-ダイバージェンスを中心に,von Neumann環上での量子ダイバージェンスの単調性やリバーシビリティの問題を研究する.将来的には,von Neumann環の場合に拡張した設定で,量子情報の分野で関連する問題についての応用的研究を目指す.今年度の研究として,von Neumann環上の標準型と極大型のf-ダイバージェンスの一般論を構築する.当面の目標として,これらのf-ダイバージェンスの積分を用いた変分表示を確立することである.
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Causes of Carryover |
(理由)スウォン(韓国)のSungkyunkwan大学で開催された「2017 Korea-China International Conference on Matrix Theory with Applications」への出張の経費は本科研費から支出する予定であったが,出張先機関から旅費,滞在費の全額が支給された.そのため,旅費に支出が予定より少なくなった. (使用計画)今年度は7/15-21にベドレボ(ポーランド)で開催される「18th Workshop: Noncommutative Probability, Operator Algebras, Random Matrices and Related Topics, with Applications」と,7/23-27にケンブリッジ(英国)のニュートン研究所で開催される「Beyond I.I.D. in Information Theory」に一括出張し,さらに9月にブダペスト工業経済大学でM. Mosonyi氏が開催する「Quantum Information Theory and Mathematical Physics」に出席する.他に,国内の研究集会への出席も多い.したがって,前年度からの繰り越しがあるのは好都合である.
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Research Products
(17 results)