2021 Fiscal Year Research-status Report
Algebra of measured groupoids
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17K05268
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木田 良才 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (90451517)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 測度同値 / 軌道同型 / 離散群 |
Outline of Annual Research Achievements |
離散群の測度同値類に関する研究を行った。測度同値とは、可算群の間で定義される同値関係であり、幾何学的群論における擬等長の, エルゴード理論的対応物である。測度同値は、可算群の標準確率空間への自由保測作用に対する、軌道同型と深く関連する概念でもある。様々な離散群に対して互いに測度同値かどうかを問う問題は、近年の軌道同型理論の研究を大きく推し進めた話題の一つである。今年度は組み合わせ群論および幾何学的群論で古くから研究されている、バウムスラッグ・ソリター群の研究を行った。これは2つの自然数 p, q に対して定まる群であり、2つの生成元 a, t と関係式 ta^pt^{-1}=a^q をもつ群として定義される。異なる自然数の組 (p, q) に対して定まるバウムスラッグ・ソリター群が互いに測度同値かどうかという問題に興味がある。
過去の研究で、バウムスラッグ・ソリター群の標準確率空間への自由保測作用に対し、いくつかの軌道同型不変量を得た。そこで重要になるのが、モジュラー準同型とよばれる、バウムスラッグ・ソリター群から正の実数全体の群への準同型である。これは、バウムスラッグ・ソリター群の各元が、a が生成する巡回群上で起こす歪量を取り出す準同型である。過去の研究で、2つの非従順なバウムスラッグ・ソリター群が測度同値ならば、それらが定めるモジュラー準同型の核が測度同値になることを示した。今年度は、非従順なバウムスラッグ・ソリター群に対し、そのモジュラー準同型の核が、整数全体の群と無限階数の自由群の直積に測度同値になることを示した。また、この主張の、一般バウムスラッグ・ソリター群に対する主張への一般化を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バウムスラッグ・ソリター群に対する主張に関しては、現在、論文にまとめている段階である。一般化バウムスラッグ・ソリター群に対する主張に関しては、一般化における困難が観察されている。当初の問題である、バウムスラッグ・ソリター群自身に対する側道同値の問題に関しては、今のところ、有効なアプローチは見つかっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
過去の研究で構成した軌道同型不変量はフローとよばれる。推移的でないフローが現れる場合の扱いが難しい。エルゴード理論で古くから研究されている、III_0型とよばれる作用の研究を足がかりに、目標の問題へのアプローチを探りたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響により、情報収集のための出張の機会が著しく減ったため。次年度使用額の多くは、研究打ち合わせと研究集会参加のための旅費に当てる。
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