2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K05269
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
関口 次郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (30117717)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポテンシャル・ベクトル場 / パンルベVI方程式 / 拡張WDVV方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の中心的な研究テーマは,パンルベVI方程式の代数関数解から大久保型微分方程式を構成して,ポテンシャル・ベクトル場を決定することである。これは琉球大学の加藤満生名誉教授と連携研究者の同大学眞野智行准教授との共同研究である。拡張WVDD方程式はWDVV方程式の拡張であり,加藤,眞野両氏との共同研究で導入したものである。この非線形微分方程式系の解をポテンシャル・ベクトル場と呼んでいる。この方程式系の自明でない解を求めることは重要な研究テーマと思える。またパンルベVI方程式の代数関数解からポテンシャル・ベクトる場を求められることも確立している。これまでに,多くの研究者によって求められた代数関数解のそれぞれに対してポテンシャル・ベクトル場の具体形を求めることを試みてきた。いくつかの方法を考案してそれらの有効性を確かめつつ計算していった。その結果30数通りの場合にポテンシャル・ベクトル場を求めることができた。Lisovvy-Tykhyyによって,代数関数解の分類は確立しているが,その結果によれば,45種類のものがわたしたちの関心のある対象である。したがってまだできていない代数関数解の場合がある。すべての場合に適用できる方法を加藤名誉教授が提案された。その方法の有効性を検証しながら残りの場合にポテンシャル・ベクトル場を決定することを研究中である。 これまでに得られた成果は論文として発表した。またこの研究の成果と関連した話題について,海外では,アルカラ大学(スペイン)で開催されたFASdiff17,シドニー大学(オーストラリア)で開催されたJARCS SYDNEY 2017で講演した。国内では,16th Oka Symposium(奈良女子大学),第2回古典解析・徳島研究会(徳島大学),アクセサリー・パラメーター研究会(熊本大学)などで講演した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,almost Belyi関数と自由因子の関係を調べることもテーマにあげていた。それについては一応目指していたところまで成果を得ることはできた。まだ計算結果が複雑であり整理して簡明化できる可能性がありこれが今後の課題である。それを共同研究者のR. Vidunas氏とともに整理している段階である。 ポテンシャル・ベクトル場の研究は,これまでの成果をまとめた論文を出版させ一段落している。しかしまだ分類された代数関数解のうちポテンシャル・ベクトル場が求まっていない場合がある。それらについては,加藤名誉教授の提案されたアイデアをもとにポテンシャル・ベクトル場を求める予定である。このアイデアについては,準備的考察において修正すべき点などの検討もして,すべての場合に適用できることの見通しがついた段階まで到達している。また,Oka symposium,古典解析・徳島研究会,アクセサリー・パラメーター研究会などでの講演でこのアイデアの有効性や部分的に得た知見を説明した。
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Strategy for Future Research Activity |
Lisovyy-Tykhyyによって分類されたパンルベVI方程式の代数関数解に対応するポテンシャル・ベクトル場を決定することが研究テーマのひとつである。これまでにポテンシャル・ベクトル場を求めたもの以外の代数関数解に対しても効果的な方法が共同研究者の琉球大学の加藤名誉教授によって提案されている。いくつかの場合にはその方法を少し修正する必要があると思われる。準備的な考察によってそれを克服できる見通しはついているので,このテーマを完成させることを今後の研究の目的とする。またポテンシャル・ベクトル場を決定するだけでなく,それを整理して簡明な表示を求めることも課題にする。この簡明表示を求めることはベックルント変換が関係すると思われるので,ベックルント変換について調べることも考えている。 鏡映群に関係するポテンシャル・ベクトル場の一意性について調べることも研究テーマにする。与えられた既約な有限実(または複素)鏡映群に対して,ポテンシャル・ベクトル場の一意性は一般には不成立である。どの鏡映群の場合に一意性が成り立つかを調べることを当面の課題とする。個別の鏡映群に対して調べていくことで結果を求める。すでに準備的な考察において,いくつかの場合に満足できる知見を得ており,想定している目標に到達できるものと期待している。 almost Belyi関数については,引き続き共同研究者のR. Vidunas氏と連絡をとり合って成果を論文としてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
残額が1万円弱あったが,次年度に繰り越しことが最適な使用法と判断した。
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