2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K05269
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
関口 次郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (30117717)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | WDVV方程式 / 代数的ポテンシャル / 実鏡映群 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の中心的テーマは代数的ポテンシャルを構成する問題である。これは本研究の目的よりも先にある問題として位置づけられる。実際、これまでの研究の中心的な研究対象はパンルベVI方程式(=PVI)の代数関数解に対応するポテンシャル・ベクトル場(=PVF)であった。これは3変数のWVDD方程式の一般化である拡張WDVV方程式の解である。この先にある研究のテーマとして、変数が4以上のWDVV方程式の代数関数解=代数的ポテンシャル(=AP)を構成する問題があり、そのような例はあまり知られていなかった。B.Dubrovinは「AP全体と既約な実鏡映群の原始的共役類とが1対1に対応するだろう」と予想した。これまで3変数の場合の代数的PVFを構成したときに考えたアイデアと、Y.DinarのAPについての論文の結果を参考にして例外型実鏡映群の場合にいくつかAPを構成できた。さらにT.Douvropoulosに教えていただいた原始的共役類についてのデータを参考にして、特にH4型鏡映群の場合にいくつかのAPを構成した。また副産物としてE6,E7型の場合に構成したAPと複素鏡映群ST33,ST34の判別式との関係についての知見を得た。これらはDubrovin予想の解決への突破口になるものと期待される。 関連するがもうひとつのテーマは、3変数多項式ポテンシャルと4変数三重ハミルトン構造を持つAPとの関係についての問題である。もっとも基本的な問題はS.Romanoによって提起された予想、「Dubrovinによって分類された3種類の3変数多項式ポテンシャルと4変数三重ハミルトン構造を持つAPとが対応する」ことを示すことである。この問題についても新たな知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
WDVV方程式の解であるAPに関するDubrovin予想を知ったのは、2019年3月にパリ大学のMichel教授との研究連絡のためにパリを訪問したときであった。それまでの3変数の場合の代数的PVFの研究のアイデアが生かせる可能性があると思いAPの構成を試みた。その結果、例外型実鏡映群に対象を限定しているが、単純リー環の副ベキ零軌道に対応するAPの構成についてのY.Dinarの論文を参考にして、いくつかのAPを構成することに成功した。副産物として、Dinarが求めたE8型のAPについての長大な式と本研究代表者が求めた比較定短いE8型のAPの式が簡単な座標変換によって一致することを確認した。また複素鏡映群ST33,ST34の判別式がE6,E7型のAPから簡単な操作によって構成できることを示せた。これらの成果はDubrovin予想の進展に寄与するものと期待できる。S.Romanoの提起した予想に関しては、問題を常微分方程式の問題に帰着させることによって、数式処理システムMathematicaに大きく依拠しているがA3-D4,B3-F4の対応については期待される結果を得ることができた。H3-H4の対応については、コンピュータの容量を超えているため期待される結果を示すには至らず、今後の研究の課題として残されることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本研究の最終年度であった。2019年9月にハノーバー(ドイツ)で開催されたワークショップで講演した内容の進展を議論するため2020年3月にボーフム大学(ドイツ)に渡航してドイツ、フランスの研究者と研究交流する予定であった。またその後ワルシャワ(ポーランド)でも研究交流をする予定であった。これらは新型コロナウイルス感染拡大のため中止し、未使用の渡航費、滞在費に使用予定だった研究費を2020年度まで継続使用することにした。国内旅行、海外渡航は難しい情勢なので、現状では自宅で研究を継続し、新型コロナウイルスの感染が減少傾向になってから国内外の研究者とオンラインによる交流をする予定である。すでにスペインで6月末に開催されるonline conferenceに参加予定である。海外旅行のための渡航費、滞在費については、新型コロナウイルスの影響で見通しが立たないので、オンラインによるconference,workshop等のために必要な情報機器の充実、に使用目的を変更する予定である。また国内移動が可能になれば、国内の研究者との研究交流にも予算を使用する予定である。
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Causes of Carryover |
2019年9月にハノーバー(ドイツ)、10月に青島(中国)に渡航したが、前者は旅費滞在費は先方負担、青島については渡航費のみを科研費使用、滞在費は先方負担。そのため予算に余裕が生じた。この予算を利用して2020年3月にボーフム(ドイツ)、ワルシャワ(ポーランド)への約2週間の渡航を計画した。しかし、新型コロナウイルス感染拡大のためこの計画を中止した。渡航を2020度9月以降に延期する予定であったが、今後の感染の影響による社会状況が不明のため延期した渡航計画を2020年度に実施することはきわめて困難な情勢である。そのためこの計画はオンラインによる研究交流に移行することにする。 予算の残額について:研究活動維持のための経費、オンライン活動に必要な情報機器を整備拡充するための費用、また国内移動が可能になった場合に国内での研究交流のための旅費等に使用する。
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