2021 Fiscal Year Research-status Report
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17K05269
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
関口 次郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (30117717)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | WDVV方程式 / 代数的ポテンシャル / 実鏡映群 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の中心的研究テーマは代数的ポテンシャルを構成する問題である。昨年度までに代数的ポテンシャルの例をいくつか構成している。今年度はこれらのポテンシャルに関連する話題を研究した。 第一の成果は、E8型実鏡映群に関係する代数的ポテンシャルに関してである。このポテンシャルと、Omanの研究者Y.Dinarが以前に求めていたものとが一致することを確認した。この成果はY.Dinarとの共著論文にまとめた。 第二の成果は、3重ハミルトン構造を持つ4変数代数的ポテンシャルに関係する研究を論文にまとめたことである。昨年スペインの大学で開催されたオンラインのワークショップ(FASnet20)において結果を発表していたが、FASnet20の報告集に論文を投稿した。3重ハミルトン構造を持つ4変数代数的ポテンシャルはD4,F4,H4型実鏡映群と関係している。この性質を持つ1パラメータの代数的ポテンシャルを構成した。これは新しい知見である。それらとA3,B3,H3型実鏡映群の代数的ポテンシャルとの対応を調べることが本来の問題だが、これについては部分的な解答を得た。 第三のテーマは、求めたE6,E7,E8型代数的ポテンシャルに関係する問題の研究である。昨年度中にこれらの代数的ポテンシャルに対応するE6,E7,E8型単純特異点を持つ3次元空間の超曲面の変形族を構成した。一般の代数的ポテンシャルと単純特異点の変形族の間に対応があるかという予想を定式化した。この予想が他の代数的ポテンシャルの場合に成り立つかどうかを調べた。これについては目立った知見は得られていない段階である。また複素鏡映群ST33,ST34とE6,E7型実鏡映群との関係についても調べた。これについては、ST33からW(E6)への群準同型を構成し、その応用としてモーデル・ヴェイユ束についての塩田理論をST33に応用することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一の成果:E8(1)型代数的ポテンシャルを構成し、ポテンシャルがオマーンの研究者Y.Dinarが以前に求めていたものが一致することを確認した。それを共著論文にまとめ、雑誌に投稿しすでに出版された。 第二の成果:3重ハミルトン構造をもつ4次元代数的ポテンシャルを調べた。これらはB4,F4.H4型実鏡映群と関係しており、A3,B3,H3型代数的ポテンシャルとの関係を調べることが目的であった。この目的はDubrovin予想の特別な場合を示すことに他ならない。研究の過程でDubrovin予想の反例になることが示せたかと思ったが、実は3重ハミルトン構造をもつ4次元代数的ポテンシャルにはパラメータを含むことがわかり、このパラメータを含むポテンシャルと3階の実鏡映群との対応を示すことが正しいDubrovin予想であるできであるとの知見を得た。パラメータを含む代数的ポテンシャルを構成したことは新しい進展と思われるが、扱っている場合のDubrovin予想については部分的な知見が得られた段階にとどまる。複雑な計算の検証が必要であり、コンピュータの容量を超えていることが最終的な結果に到達できない理由と思われる。2022年3月に熊本大学のアクセサリー・パラメータ研究会においてこのテーマに関係する内容を口頭発表した。 第三の研究テーマは昨年度までに求めていたE6,E7,E8型代数的ポテンシャルの例の性質と単純特異点の変形族との対応を調べることである。このテーマについて、2021年4月にOmanのSultan Qaboos大学において開催されたワークショップ、同年同月に日本大学の特異点月曜セミナー、同年6月金沢大学の研究会において口頭発表した。特にSultan Qaboos大学でのワークショップでは主催者のひとりでもあった。 いずれの口頭発表もオンラインであったことに注意する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は2019年度に終了する予定であったが、新型コロナウィルスの影響で2年間延長した。しかしまだ影響が収まらず2022年度まで延長することにした。2022年度は、代数的ポテンシャルと超曲面の特異点の変形族との対応とそれに関連する話題を研究する予定である。当面の課題は、次のことである。E6,E7,E8型代数的ポテンシャルの例の性質と単純特異点の変形族との対応に関連する話題でこれまでに得られた知見を論文にまとめて雑誌に投稿することを目指す。E6型単純特異点の変形族と複素鏡映群ST33、空間3次曲面の関係について研究して得られた知見を論文にまとめる。次に推進する予定の課題は次のことである。E7型単純特異点の変形族と複素鏡映群ST34の関係を調べることである。これに関しては金沢大学の大浦学教授と研究連絡をしている段階である。E6,E7,E8型単純特異点の代数的ポテンシャルに対応する変形族に現れる特異点の型を調べてその性質を調べる。この課題については、甲南大学の高橋正教授の協力を得て研究を続ける予定である。
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Causes of Carryover |
次年度への繰越額は約73,000円。国内研究者との研究連絡用に使用する予定でいたが、新型コロナウイルスの影響が収まらなかったため結局使用することを断念した。新型コロナウイルスの感染状況の減少傾向にあり、国内研究者との交流に使用する予定である。予算残額も少ないので十分執行可能である。
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Research Products
(5 results)