2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K05270
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
津田 照久 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (00452730)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | パンルヴェ方程式 / 無限可積分系 / 有理函数近似 / 離散力学系 / クラスター代数 |
Outline of Annual Research Achievements |
線形常微分方程式のモノドロミーを不変に保ちながら特異点に於ける特性指数を整数だけずらす変換をシュレジンガー変換という。パンルヴェ方程式等のモノドロミー保存変形方程式にとっては,その離散的な対称性を与える重要な変換である。あるいはシュレジンガー変換そのものがパンルヴェ方程式の差分類似と看做せる点で離散力学系、離散可積分系の観点から重要な研究対象である。研究代表者は,あるクラスのシュレジンガー変換が Hermite-Pade 近似およびその双対問題を使って構成できることを発見している(眞野智行氏との共同研究)。この結果は,対象を確定特異点のみではなく不確定特異点をも許す一般的な状況にも拡張される。また、この数年の間に明らかになって来た離散パンルヴェ方程式,およびその対称性とクラスター代数との関係について,グラフの組み合わせ的な操作,所謂 mutation combinatorics からワイル群の双有理的な実現が自然に構成できることを増田哲氏,大久保直人氏との共同研究によって示した。令和2年度は,その延長線上にあたる考察として,ある種の高階 q-差分パンルヴェ方程式について,方程式およびそのワイル群対称性がクラスター代数から導出されることを示した。背景となる箙(有向グラフ)は離散 KdV 方程式と呼ばれる典型的なソリトン方程式(無限可積分系)に対応する箙の周期簡約となっていることも示唆的で興味深い。尚この結果は,増田哲氏,大久保直人氏との共著論文にまとめ,学術雑誌 RIMS Koukyuroku Bessatsu に投稿し,号数未定だが既に出版されることが決定している。クラスター代数とグラフの組み合わせ論によるワイル群の双有理的な実現,および,付随する力学系のダルブー座標やタウ函数の由来を明らかにする事は,今後の本研究の課題の大きな軸となるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で得られた結果については,既に上梓した論文も含めて複数の論文を執筆中であり,当該分野の専門家の間でも概ね好評である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は現在までのところ,概ね順調に進行しているので,研究の方向性は維持したまま,継続していく。令和2年度は,ある種の高階 q-差分パンルヴェ方程式について,方程式およびそのワイル群対称性がクラスター代数から導出されることを示した。背景となる箙(有向グラフ)は離散 KdV 方程式と呼ばれる典型的なソリトン方程式(無限可積分系)に対応する箙の周期簡約となっていることも示唆的で興味深い。クラスター代数とグラフの組み合わせ的な議論からq-差分パンルヴェ方程式を含むより一般なワイル群の双有理変換の「タウ函数」の正体を解き明かすのが、直近の重要課題と考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響のため,計画していた出張などを実施することが不可能であったため。次年度には,研究成果の発表および当該分野の最新の研究についての連絡のための国内外の出張の計画の他,タウ函数とクラスター代数に関する数値実験に集中させるため計算機の新規運用等を計画している。
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