2017 Fiscal Year Research-status Report
抽象偏微分方程式の理論―個体数変動モデルの解析手法として
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17K05273
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
蚊戸 宣幸 金沢大学, 電子情報学系, 教授 (40177423)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 個体数変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
空間領域に生息している生物の個体数変動をとらえるための数理モデルについて考える。生物の状態変数が年齢の場合は非常に多くの研究があるが,ここでは,年齢も含めたより一般のサイズを状態変数としたモデルについて研究する。その生息域内で各個体は空間的には拡散していくものとし,死亡,誕生,移入,相互作用などによる個体数密度の変化はサイズに依存するものとする。年齢よりもサイズを状態変数とした方がよい典型的な例としては植物,魚,微生物などが挙げられる。これまでの研究により,上記のような空間拡散を伴うサイズ構造化個体群動態モデルを考察するための枠組みとして,バナッハ空間またはバナッハ・ラティス上の抽象的偏微分方程式の理論が有効であることがわかってきた。 29年度の研究では,これまでの研究で得られた結果を応用することにより,線形の個体数変動モデルに対する最適収穫制御問題について考察した。ここでは特に収穫係数を制御することで収穫量を最大にする最適制御問題について考え,その最適解が存在するための十分条件を与えると同時に,ポントリャーギンの最大値原理について考察し,最適収穫のための収穫係数の形を与えた。さらに最適収穫係数が有限個の値しか取らない,いわゆるバンバン制御であるための条件を与えた。この結果は,2017年7月にスロバキアで開かれた国際会議Equadiff 2017において発表した。また,学術雑誌J. Nonlinear Convex Anal. に学術論文として発表した。 これまでの研究では,空間拡散のないモデルに対する同様の結果は知られていたが,今回の研究で,空間拡散を伴うモデルに対する収穫問題の最適解の存在及び最大値原理が示されたことは,バナッハ空間上の抽象的偏微分方程式の理論の応用として意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バナッハ空間上の抽象的偏微分方程式の理論の応用として,空間拡散のある線形のサイズ構造モデルに対する最適収穫問題について新たな結果が得られたことから,おおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もサイズ構造化個体群動態モデルへの応用を見据えた抽象偏微分方程式の理論の発展を進める。これまでの線形モデルを基礎に非線形モデルについて考察する。
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Causes of Carryover |
今年度は物品の購入を見送ったため次年度使用額が生じた。使用計画としては,物品の購入や図書の購入に充てる。
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