2019 Fiscal Year Research-status Report
抽象偏微分方程式の理論―個体数変動モデルの解析手法として
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17K05273
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
蚊戸 宣幸 金沢大学, 電子情報通信学系, 教授 (40177423)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 個体数変動モデル / 線形化安定性 / 最適制御問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の状態変数が年齢も含めたより一般のサイズに依存する場合の研究は,年齢の場合に比べまだまだ少ないが,重要性を増している。一方で,生物の生息域内での空間的広がりが一様でない場合を考慮する必要がある場合も多い。このようなことから,この研究では,サイズ構造を持つ生物の個体数変動モデルで空間への拡散を考慮した数理モデルを取り扱うことを目的とする。そしてそのために,バナッハ空間やバナッハ・ラティス上の抽象的偏微分方程式の理論を構築・整備する必要があることがわかってきた。 2019年度の研究では,時間遅れのあるサイズ構造を持つバナッハ空間上の抽象的偏微分方程式を扱い,特に定常解の線形化安定性についての結果を得た。時間遅れは,1992年のParrott,1996年のRuess等によって発展方程式に対して扱われた遅れと同様なタイプを扱い,これらの結果を拡張するものである。この結果はバナッハ空間上の抽象的偏微分方程式の理論の発展として意義があり,2019年7月にオランダで開かれた国際会議Equadiff2019において発表した。 また,アメリカから研究者を招聘して共同研究を進めた。人工的な農業,養殖などの水産業などにおいて収穫による利益を最大にするという数理モデルを元にした年齢構造の個体数変動モデルに関する非線形最適制御問題の一つである。通常は,制御集合に有界性を課すため,最適解はBang-Bang制御であることが多いが,有界性を課さない場合にDiracのデルタ関数で表現できる最適解が出てくることを示したもので,ポルトガルで開かれた国際会議12th International ISAAC Congressの査読付きProceedingに掲載が決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バナッハ空間上の抽象的偏微分方程式の理論の一つとして,空間拡散と時間遅れのある抽象的サイズ構造を持つ個体数モデルに対する定常解の線形化安定性の結果を国際会議Equadiff2019で発表できた。また,年齢依存の個体数変動モデルに対する最適制御問題についてデルタ関数で表現される最適解の存在についてアメリカの研究者と共同研究できた。 以上のこ とから,おおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
サイズと場所に依存する半線形個体数変動モデルに対する定常解の存在とその安定性について考察し,半線形抽象偏微分方程式の理論の発展を進める。また,現在共同研究中の最適制御問題について測度値の最適解の存在についての研究を発展させ,サイズ構造の持つ最適収穫問題について研究する。
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Causes of Carryover |
外国出張と外国人研究者の招聘に使用した後の残りの金額では物品の購入には少し足りず,次年度に回すことにしたため,次年度使用額が生じた。 使用計画については,物品の購入や図書の購入に充てる予定である。
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