2020 Fiscal Year Research-status Report
抽象偏微分方程式の理論―個体数変動モデルの解析手法として
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17K05273
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
蚊戸 宣幸 金沢大学, 電子情報通信学系, 教授 (40177423)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 個体数変動 / 最適制御 / 測度値制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の個体数変動に影響を与える変数として,年齢も含めた一般のサイズを考えるのは自然である。一方で,生物の生息域内での空間的広がりを考慮する必要がある場合も多い。このような理由から,サイズ構造と空間への拡散を考慮した生物の個体数変動に関する数理モデルを取り扱うことを目的とする。 2020年度の研究では,この特別な場合ではあるが応用として,年齢構造の個体数変動を用いた人工的な農業,養殖などの水産業などにおける収穫による利益を最大にするという最適収穫モデルを扱った。これは,新生個体数を人工的に供給して,年齢ごとの収穫量を決め,これら2つの量を制御することで,収益を最大にする最適制御問題である。ここでの特徴は,収益を表す関数は経済学的な理由から価格に対して非線形であるという点と通常の最適制御問題では,制御関数には有界性を仮定するのに対して,ここでは制御関数に有界を仮定しない点にある。 収益を表す関数が価格に対して線形である場合にDiracのデルタ関数で表現される制御が最適解になり得ることはすでに知られていた。今回の研究は,国際共同研究で,収益を表す関数が非線形の場合にもDiracのデルタ関数で表現される制御が最適制御になり得ることを示した。さらに,一般的に測度値の最適制御の存在定理を示した。これら結果は,2つの論文にまとめ,現在投稿中である。 今回取り扱った個体数変動モデルに対する結果は,今後サイズ依存のモデルや拡散を伴うモデルへの拡張を考える上で基本となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年齢依存の個体数変動モデルに対する非線形最適収穫問題について,デルタ関数で表現される最適解の存在と測度値の最適解の存在定理について,アメリカの研究者と共同研究し,2つの論文にまとめ投稿した。 以上のことから,おおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
測度値の最適解を持つ最適制御問題についての研究を発展させ,サイズ構造を持つ最適収穫問題,さらにサイズと空間構造を持つ最適収穫問題について研究する。 サイズと空間構造を持つ半線形個体数変動モデルに対する定常解の存在とその安定性について考察し,半線形抽象偏微分方程式の理論の発展を進める。
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Causes of Carryover |
理由:新型コロナの影響で,外国出張や外国人研究者の招聘ができなかったため,次年度使用額が生じた。
使用計画:今年度も外国出張や外国人研究者の招聘は難しいことから,物品の購入や図書の購入に充てる。
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