2017 Fiscal Year Research-status Report
Noncommutative Analysis and Functional Analytic Group Theory
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17K05277
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小沢 登高 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (60323466)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 関数解析的群論 / 半正定値問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では「関数解析的群論」の標語のもと研究を行っている.これは作用素環論をはじめとする関数解析的手法を離散群の代数的、幾何学的な構造の解析に応用するというものである.2017年度はKazhdanの性質(T)についての研究を行った.性質(T)は従順性と並んで解析的群論において最も重要な性質であり,代数的、幾何学的応用も多い.性質(T)を持つ群の代表例としてSL(n>2,Z)などの高階数実Lie群の格子が挙げられる(Kazhdan 1967)が,性質(T)を持つ無限群が存在すること自体が非自明な定理であり幾つもの応用が存在する重要な数学的事実である.本研究ではポーランドの共同研究者M. Kaluba,P. Nowakと共に,与えられた群が性質(T)を持つことを,半正定値計画問題(Semidefinite Programming)を利用して電子計算機により数学的に厳密に確認するためのアルゴリズムについての研究を行った.その結果,有限群の表現論を利用してアルゴリズムを高速化することで,階数 d=5 の自由群の自己同型群Aut(F_5)などの興味深い新しい例に対して性質(T)を確認できた.これは分野の標準的な教科書であるLubotzkyやBekka-de la Harpe--Valetteの本にも挙げられている有名未解決問題を d=5 の場合に解決するものである.またこの業績はProduct Replacement Algorithなど工業上重要なアルゴリズムを理解するうえでも重要である. 他にも,ドイツのM. De Chiffre,A. Thomとの共同研究では従順群の概表現の研究を行い,有限群に対するT. Gowersらの業績を改良する極めて一般的な定理を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Kazhdanの性質(T)を数学的に厳密に確認するための群対称半正定値問題を利用したアルゴリズムをプログラム言語juliaで実装することに成功した.このプログラムを高性能コンピュータを使用して実行したところ,Aut(F_5)が性質(T)を持つという事前には全く予期していなかった驚くべき結果が得られた.プログラムは一般に公開されおり,さらなる新しい例の発見に役立つものと思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も関数解析的群論の研究をさらに推し進めるほか,群とは必ずしも関わりのない作用素環論の研究にも注力する予定である.そのため,2018年度は純粋応用数学研究所(米国)で行われる長期プログラム「Quantitative Linear Algebra」に参加するほか,複数の国際研究集会への参加を予定している.
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Causes of Carryover |
パリ・ポワンカレ研究所への出張に当たって滞在費を本研究費から支出する予定であったが,交渉の末,先方からの支援を受けることとなったため割り当てておいた研究費が使用されなかった.また,招聘した研究者が先方の事情により来日することが出来なかったが,Latremoliereデンバー大教授は2018年度に来日できる予定である. 本研究計画の主要部分については,研究代表者がこれまで通りに数学の研究を続ける予定である.
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Research Products
(8 results)