2020 Fiscal Year Research-status Report
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17K05286
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
内山 充 立命館大学, 総合科学技術研究機構, プロジェクト研究員 (60112273)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 作用素関数 / 作用素単調関数 / 行列2次方程式 / 作用素平均 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度Proceeding of Amer. Math. Soc. (2019) で発表した論文で次の命題を証明していた。「0<A≦Bなる行列A, B に対して、X, Y の調和平均がA, 算術平均が B であるような行列0<X≦Yがただ一組存在する。」この事実から「初等数学における数の2次方程式の根と係数の関係を行列に拡張する」発想を得た。その際、数の積に対応する演算を幾何平均 # とした。得た結果を可逆な行列に限って紹介する。 定理 0<A≦Bなる行列A, B に対して次のことが成立する。 (1) X # Y = A, X + Y = 2B, 0<X≦Y であるような行列 X, Y はただ一組存在し、それは X= B-(B - A) # (B + A), Y = B + (B - A) # (B + A) である。(2) S # T = A, S + T = 2B, 0<S, T であるような行列 S, T はすべて区間 [X, Y] にあり、2次方程式 SCS -2S + ACA = 0 を満たす。但し、C は B の逆行列である。(3) C の平方根を D, K = I- DAD と置くとき、S が (2) の2次方程式の解であるための必要十分条件は、QK=KQ をみたすK の値域の部分空間への直交射影 Q が存在し、S = YDQD + XD(I-Q)D. このとき、T = 2B-S も (2) の解である。(4) 上の(2)の2次方程式の解の個数が有限であるための必要十分条件は K の 0 でない固有値の重複度が全て 1 である。(5) 上の (3) とは逆に、一般の解 S から、広義積分(式は略)で X, Y を求めることができる。 国内の学会・研究集会や国際研究集会が全てCOVID19の為中止になり成果の発表の機会が失われため、研究期間を延長せざるを得なかった。国際協力の一環として、当研究課題に関連したインドCochin University of Science and Technology での博士号の論文審査を務めたこと、日本数学会発行「数学」に記載するため B. Simon ‘Loewner’s Theorem on Monotone Matrix Functions’ (Springer 2019) の書評を書いたことを報告したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
作用素平均についての関係式を追及することによって、初等数学の2次方程式の根と係数の関係を行列に拡張できた。
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Strategy for Future Research Activity |
当研究課題の目的はほぼ達成できたといってもよい。研究期間を延長した次年度はこれらの成果発表を有効的に行いたい。具体的には今年度全く開かれなかった国際研究集会が開催され次第参加し成果を発表したい。 更に、近年急速に発展している3個以上の行列の幾何平均についても取り組みたい。いくつかの手法によって導入された幾何平均についての多量の先行論文を読み始めているが、それらを深く検証したい。
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Causes of Carryover |
COVID-19 の為、国内外の研究集会が中止になり、成果の発表あるいは意見交換の場が失われた。ワクチンの接種が終わり次第、研究打ち合わせなどを行いたい。更に、総合的な研究成果の発表のためにPCと周辺器具を購入する。
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Research Products
(1 results)