2019 Fiscal Year Research-status Report
スコロホッドの埋め込み及び関連する変分不等式の研究
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17K05288
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
針谷 祐 東北大学, 理学研究科, 准教授 (20404030)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 確率解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
幾何Brown運動の時間積分により定まる指数Brown汎関数とBrown運動自身との結合確率分布は, いわゆるHartman--Watson分布の(非正規化)密度関数を用いて記述されることが分かっている(M. Yor, 1992年). また, このHartman--Watson密度関数は, Yorの公式(1980年)として知られる積分表示をもつ. 指数Brown汎関数は数理ファイナンスのアジアオプションに現れるほか,ランダム環境下の拡散過程や双曲空間上のラプラス作用素の確率解析においても重要である.2019年度の研究では主に, 前年度に引き続きHartman--Watson密度関数の積分表示について考察を行った. その結果, 前年度までの研究で得られていた, Yorの公式とは異なる複数の積分表示を包括する積分等式を見出し, それを用いることによってさらなる種類の積分表示が導かれることが分かった. またこの積分等式から, 上述のYorの1992年の結果を, Hartman--Watson密度関数の一つの積分表示と合わせて再現することも可能である. これらの研究成果を応用とともにまとめた論文を現在学術誌に投稿中であり,また,プレプリントサーバarXiv.orgにおいて,“Integral representations for the Hartman--Watson density”とのタイトルの下でその原稿を公開している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」の項目に記載した2019年度の研究成果と,当該科学研究費補助金の主な研究課題であるSkorokhod(スコロホッド)の埋め込み問題とは,Brown運動を共通の土台にもつものの,直接的な結びつきの強いものではない.そのため,「やや遅れている」との自己評価にとどめた.なお,上述の研究成果には,ドリフトの値が非負の整数の場合にドリフト付きの指数Brown汎関数の確率密度関数に対する簡明な表示を与えたD. Dufresneの結果(2001年)を比較的容易に再現できるなどの複数の応用があり,その観点からも,得られた研究成果は指数Brown汎関数の研究において意義あるものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度より引き続き行った2019年度の研究は,Bougerolの等式についてより深い理解を得ることを動機にするものである.ここに,Bougerolの等式とは,指数Brown汎関数を独立なBrown運動の時刻に代入して得られる確率変数が,Brown運動と双曲線正弦関数との合成に同分布であることを主張するものである.従来,この等式の成立は,指数汎関数を定める時間積分の終端時刻が非ランダムな,つまり決定論的な場合に知られていた.前年度の研究では,等式の成立を終端時刻がランダムな場合にまで拡張した.より正確には,Brown運動のある汎関数で定まる拡散過程の任意の停止時刻に対しても成立が示される.この拡張については,その導出過程で援用した既存の結果(H. Matsumoto & M. Yor, 2000年)に鑑みれば,Skorokhodの埋め込み問題に対する「Brown運動の汎関数で定まる拡散過程の到達時刻をもとのBrown運動に代入することにより,ある特定の確率分布を実現する」との新たな解の構成可能性を示唆するものと考えており,当該分野の最新の研究結果も取り込みつつ,2019年度の研究で得た知見を活かして引き続き研究課題に取り組む.
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Causes of Carryover |
前年度に引き続き務めた他業務との日程の重複から,出張を控えた研究集会が複数件生じた.また,実施できた出張においては,研究費を効率よく充当するように努めた.これらに加えて,2019年度は学内状況の変化もあり研究に充てられる時間がより減ったため,予定をしていたパソコンやプリンタの刷新を含む研究室環境の整備を控えることとなった.2020年度の使用に際しては,これら研究室環境の整備に努めるとともに,研究打ち合わせおよび研究成果発表旅費に効果的に配分する予定である.また,引き続き解析学・確率論関連図書の購入を通じて,最新の理論の習得および情報収集を行う.
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