2017 Fiscal Year Research-status Report
Characterizations of function spaces that preserve some results on martingales
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17K05291
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
菊池 万里 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (20204836)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マルチンゲール / Banach関数空間 / 弱空間 / 良可測射影 / 可予測射影 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、Banach関数空間Xに於けるFefferman型のマルチンゲール不等式、及び、弱空間w-Xに於けるマルチンゲールの2次変分に関する不等式が成立する為の必要十分条件を求めることを目的としていたが、研究を進める過程で、それらとは別の不等式に関する新たな知見を得ることができたので、計画を変更して別の不等式を中心に研究を進めることとした。これにより、下記の2つの研究成果を得ることができた。尚、この研究成果の一部は、本科研費の助成に加え、平成28年度の科研費(研究課題/領域番号25400129)の助成を受けて行った研究によるものでもある。 (1)Banach関数空間Xの弱空間w-Xに於いて、Burkholder-Davis-Gundy型の不等式が成立する為の必要十分条件を得た。 (2)確率過程の良可測射影に関するStein型の不等式と可予測射影に関するLepingle型の不等式が、Banach関数空間X、及び、その弱空間w-Xに於いて成立する為の必要十分条件を得た。 (1)の研究で考察されたBurkholder-Davis-Gundy型の不等式は、マルチンゲール理論に於いて基本的であり、極めて重要な不等式である。この型の不等式が成立する為の必要十分条件が得られたことにより、今後、マルチンゲール理論の新たな展開が可能になるのではないかと思われる。また(2)の研究で考察された確率過程の良可測射影・可予測射影に対する不等式は、応用上から見ても有意義な成果であろうと思われる。実際、良可測射影に関する不等式は、Burkholder-Davis-Gundy型の不等式を導く際に用いられる不等式でもあり、可予測射影に関する不等式は、Delbaen-Schachermayerの論文にも記されている通り、数理ファイナンスの分野への応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下記の2つの理由から、研究はおおむね順調に進展していると判断した。 (1)当初、Banach関数空間Xに於けるFefferman型のマルチンゲール不等式、及び、弱空間w-Xに於けるマルチンゲールの2次変分に関する不等式の研究を進める予定であったが、計画を変更して研究を進めた結果、Burkholder-Davis-Gundy型の不等式がXの弱空間w-Xに於いて成立する為の必要十分条件、及び、確率過程の良可測射影・可予測射影に関する不等式が空間X、及び、弱空間w-Xに於いて成立する為の必要十分条件を得ることができた。Burkholder-Davis-Gundy型の不等式はマルチンゲール理論に於いて極めて重要な不等式であり、可予測射影に関する不等式は、数理ファイナンスの分野への応用も考え得ることから、得られた成果は意義深いと考えられる。 (2)実解析学に於いて、多くの不等式は作用素の有界性を意味するものである。その為、不等式の研究は、それが成立する為の十分条件を求めるものである場合が多い。他方、不等式の成立する必要条件を求める研究は、その難しさも手伝って、ほとんど見かけない。本研究の目的の1つは、種々のマルチンゲール不等式がBanach関数空間Xやその弱空間w-Xなどに於いて成立する為の必要十分条件(そのような空間Xの特徴付け)を求めるものであり、平成29年度の研究によりBurkholder-Davis-Gundy型の不等式、及び、良可測射影・可予測射影に関する不等式が成立する為の必要十分条件が得られている。その意味で、平成29年度の研究によって得られた成果は、本研究の目的に沿ったものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の当初の研究計画であったBanach関数空間Xに於けるFefferman型のマルチンゲール不等式、及び、弱空間w-Xに於けるマルチンゲールの2次変分に関する不等式が成立する為の必要十分条件を求める研究を進めるとともに、既に研究成果を得ているBurkholder-Davis-Gundy型の不等式の研究に於いて、未だ解決できていない部分の研究を進めたい。 また、空間Xに付随して自然に現れる(弱空間w-Xとは別の)準Banach関数空間に於けるマルチンゲール不等式についても研究を進めたい。研究代表者のこれまでの研究により、Xの弱空間w-Xに於けるマルチンゲール不等式に関する研究成果が得られている。w-Xは、様々な視点からXを考察する際に自然に現れる準Banach関数空間であるが、w-Xの他にも自然に現れる準Banach関数空間が存在する。そのような空間を定式化する(定義する)ことも既にできている。当初の計画に加えて、そのような新たな空間に於ける種々のマルチンゲール不等式についても、それらが成立する為の必要十分条件を求める研究を推進したい。
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