2021 Fiscal Year Research-status Report
Characterizations of function spaces that preserve some results on martingales
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17K05291
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
菊池 万里 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (20204836)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マルチンゲール / マルチンゲール不等式 / 可予測射影 / 良可測射影 / Banach関数空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、離散時径数の確率過程について、その可予測射影・良可測射影に対する弱型不等式に関する研究成果を得た。研究代表者(菊池)のこれまでの研究により、「Banach関数空間Xの弱空間w-Xの構造が、ある種のマルチンゲール理論を用いて表現できる」ということが明らかとなった。ここに、関数空間Xの弱空間w-Xとは、Lp-空間ノルムを用いて弱空間w-Lpが定義されるのと同様の方法で定義される準Banach空間である。得られた結果は、これまでの研究代表者の研究を更に発展させることにつながる結果であると考えている。 確率過程の可予測射影・良可測射影は、マルチンゲール理論を展開する上で欠かすことのできない重要なツールである。実際、連続時径数の確率過程の研究においては、至るところで利用さてきた。離散時径数の確率過程の可予測射影・良可測射影についても、数理ファイナンスへの応用等が研究されており、これらの射影を研究することは応用上も大変な重要な意味を持つ。研究代表者はLp-空間などで成立することが知られている可予測射影・良可測射影に関するノルム不等式と同様の不等式が成立するBanach関数空間Xの特徴付け(必要十分条件)を既に得ており、この結果は論文としての掲載が決定している。 令和3年度の研究により、XをBanach関数空間とするとき、確率過程f=(fn)の可予測射影・良可測射影のP乗和のw-X準ノルムをf=(fn)のp乗和のXノルムで評価する不等式が成立するBanach関数空間Xの特徴付けを得ることができた。得られた特徴付けは、Xの上基本関数・下基本関数、及び、それらを用いて定義される指標(再配列不変空間のBoyd指標を拡張する指標)を用いて表現される。その結果として、XがLp-空間の場合には対応する不等式が成立することが分かる。得られた結果は、論文にまとめて発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の研究期間の3年目からこれまで副学部長の任を拝することとなり、研究に費やせる時間が限られてしまったことが、研究が予定通りに進まなかった一つの要因である。 研究が予定通りに進まなかったもう一つの要因は、新型コロナウイルスの蔓延にある。本研究課題は、確率論、実解析学、関数解析学など、数学の多くの分野と密接な関係があるため、できるだけ多くの研究会等に参加し、他の研究者との交流、情報交換を進めることを予定していた。しかしながら、多くの研究会やシンポジウム、セミナー等が開催されなかったため、他の研究者との交流が極端に減ってしまい、情報収集が思うように進まなかったことも研究の遅れにつながっている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究で確立した手法は、様々なマルチンゲール不等式の研究に利用できると思われる。実際、一部のマルチンゲール不等式については、令和3年度の研究結果から直接得られることが既に分かっている。今後(特例として1年延長が認められた研究期間の最後の1年)は「マルチンゲールの空間上の様々な作用素について、マルチンゲールにその作用素を施した確率過程のw-Xにおける準ノルムを、元のマルチンゲールのXノルムで評価するタイプの不等式」が成立するBanach関数空間の構造の研究に充てたい。
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Causes of Carryover |
本研究課題は、確率論、実解析学、関数解析学等、数学の多くの分野と深いつながりがある。その為、複数の分野にわたってできる限り多くの学会、研究集会、シンポジウム、セミナー等に参加し、研究打ち合わせ・情報交換を行う計画を立て、旅費を中心とした予算を計上していた。しかしながら、2020年から新型コロナウイルスが蔓延し、参加を予定していた学会、研究会、シンポジウム等が軒並みオンライン開催となり、予算の多くを占める旅費の出費がなくなった。そのような状態が2年簡にわたって続いた為、使用を予定していた未使用の旅費が累積することとなり、延長を認めて頂いた研究機関の最後の年に繰り越すこととなった。 2022年度は(現時点で)多くの学会、研究集会、シンポジウム等で対面開催が予定されている。数学においては、他の研究者との対面での交流が、研究の進展に直結することが多い。研究の更なる進展を目指し、対面で開催される研究集会等にできるだけ多く参加し、研究打ち合わせ・情報交換を行う計画である。 また、多くの分野と密接な関係のある研究であるが故に、多くの専門書が必要となる。必要な専門書等の文献を購入するほか、コンピュータ関連の備品・消耗品の購入を予定している。
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