2017 Fiscal Year Research-status Report
多変数超幾何関数の公式の数式処理による導出とその応用
Project/Area Number |
17K05292
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小原 功任 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (00313635)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 複素解析 / 超幾何関数 / 数式処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の研究目的は、多変数超幾何関数について、パッフィアン方程式や関数等式などのさまざまな公式(関係式)を数式処理の技法を援用しながら導出することである。計算数理統計など関連する諸分野が急速に発展する中で、計算効率のよい公式を探索することの重要性は増している。探索は数式処理システム上に専用のソフトウェアを実装することで行う。この先には、より一般化された多変数超幾何関数の一族に対して、新しい公式を発見し、それらを系統的に理解していくという長期的な目標がある。 平成29年度は、ある合流型の2変数超幾何関数にターゲットを絞り、その性質を詳しく調べた。この超幾何関数は、一変数関数 0F1 を積分核にもつ、積分表示で定義されるものである。数式処理を援用してパッフィアン方程式の具体形を求め、さらに級数解の漸近挙動も含めて振る舞いを確認した。パッフィアン方程式はランク4であり、数値的には不安定性を示す。しかしながらある特定の方向に制限したとき、その方向での常微分方程式はランク3となり、さらにランク3方程式からパッフィアン方程式を構成することで、その方向で数値的に安定な振る舞いをもつことも示した。 この2変数超幾何関数を成分とする行列の行列式によって、多アンテナ無線通信システムにおける outage probability が表示されることが先行研究から知られている。われわれの方法を応用することで、多アンテナ無線通信システムにおける outage probability の効率的な数値計算が可能となることをあわせて示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ひとつの超幾何関数についてではあるが、その性質を詳細に調べることができた。研究結果は、日本数学会秋季総合分科会で公表し、論文は学術雑誌に投稿中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
他の超幾何関数についても、調査を予定している。
|
Causes of Carryover |
今年度、出張旅費が予定よりも多く必要となったため、物品費の使用を抑えた。残額は次年度の物品費に使用する予定である。
|