2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K05297
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
深澤 正彰 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70506451)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 確率解析 / 数理ファイナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
条件付き非線形期待値過程による非線形確率積分を研究した。条件付き非線形期待値は後退確率微分方程式の解として構成されるものである。 1) まず後退確率微分方程式がマルコフ型の場合に、伊藤積分に関する伊藤の表現定理を、この非線形確率積分に関する表現定理に拡張するための新しい十分条件を得た。またマルコフ型ではない場合にもマリアバン微分を用いた十分条件を与えた。非線形確率積分は不完全流動性の下での資産運用収益のモデルであり、表現定理は金融派生商品の完全ヘッジ可能性を保証する重要な結果である。金融危機においては流動性が悪化し、これがヘッジ損失を引き起こしてさらに流動性を悪化させる悪循環となるが、本研究におけるヘッジ戦略はこの流動性の悪化を予め織り込んで完全ヘッジを可能にする。 2) さらに後退確率微分方程式がリプシッツ条件を満たす場合に、その解の終端条件に関する関数解析的な意味での連続性に着目して、非線形確率積分の新しい定式化を与え、離散近似への安定性に関する評価を得た。これはファイナンスの言葉ではヘッジ戦略の離散化に関する安定性を意味し、非線形確率積分のファイナンスへの応用上、欠かせない結果である。 3) これらの他、前進と後退が絡み合い、線形ではあるが退化性によって解の存在が知られていなかった確率微分方程式について、その解を陽に構成し、解の一意性も証明することに成功した。ファイナンスへの応用として不完全流動性下での市場均衡モデルを構築した。これにより流動性が市場均衡にもたらす影響を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の内、後退確率微分方程式がマルコフ型の場合で、半線形偏微分方程式の解を利用して離散近似誤差を解析する計画はまだ進んでいないが、一方でリプシッツ型の場合にアプリオリ評価を用いることで離散近似誤差を評価できたのは想定外の進展である。よって全体として順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに得られたマリアバン微分による完備性の条件をより詳細に検討し、より簡明で美しい理論へと進展させる。また当初計画通り、後退確率差分方程式による近似の可能性も研究する。
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Causes of Carryover |
予定していた海外出張及び共同研究者招聘を次年度に変更したため。
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Research Products
(8 results)