2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K05299
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
塩沢 裕一 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (60454518)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 分枝ブラウン運動 / ファインマン・カッツ汎関数 / ディリクレ形式 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)昨年度は,優臨界的な多次元分枝ブラウン運動について,分裂法則が空間非一様的な場合に,粒子の空間内での広がり方を明らかにした。本年度は,この結果を論文にまとめて専門誌に投稿した(掲載決定済み)。次に,粒子の消滅を許す場合にも,粒子の拡散度が先の結果と同様に定まることを示した。この証明のために,符号付き加藤クラス測度に対応するファインマン・カッツ汎関数の期待値の漸近挙動を解析した。
2)Jian Wang 氏(福建師範大学)と共同研究を行い,純飛躍型対称マルコフ過程の飛躍核が二次モーメントを持つような条件のもとで,upper rate function がブラウン運動のような重複対数型になることを示した。1次元対称レビ過程に対しては,もっと強く重複大数の法則が成立する。しかし,そこではレビ過程の性質が効いている。本研究により,より一般の場合にも粒子がブラウン運動的な動き方をすることが明らかになった。証明の副産物として,飛躍核が多項式減衰する条件下で熱核の長時間挙動を得た。
3)今年度は,研究セミナー「大阪大学確率論セミナー」や,マルコフ過程をテーマとした研究集会「マルコフ過程とその周辺」および「ディリクレ形式と対称マルコフ過程」,確率論分野の総合的な研究集会「確率論シンポジウム」を共同で開催し,研究交流や情報交換を行った。さらに,国内外の研究集会やセミナーにおいて研究成果の報告や議論を行った。なお,本研究費の一部を旅費にあてた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初は,分枝ブラウン運動の粒子の消滅を許したとき,拡散度に関する結果を得ることは困難であろうと予想していた。しかしながら,年度内に一定の成果を得ることができた。また,飛躍核の2次モーメントが有界であるような飛躍型対称マルコフ過程について,upper rate function が重複対数型になるための適当な条件や,熱核の長時間評価を与えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究を通じて,分枝ブラウン運動や飛躍型対称マルコフ過程の経路解析に関する一定の成果を得た。これらの研究を行う過程で,前者については臨界的な場合の拡散度の挙動の解析,後者についてはいつ重複対数の法則が成り立つのかという問題が生じた。次年度はこれらの問題に取り組みたい。また,国内外の研究集会に参加して,当該年度に得られた研究成果を発表するとともに,研究交流や情報交換を行う。
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Causes of Carryover |
旅費支出額の事前見積もりと実際の支出状況との間にずれが生じたため。 次年度の出張経費に充てる予定である。
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