2018 Fiscal Year Research-status Report
予測理論的新手法による動的確率従属性解析とそのファイナンスへの応用
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17K05302
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井上 昭彦 広島大学, 理学研究科, 教授 (50168431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠原 雪夫 北海道大学, 理学研究院, 研究院研究員 (10399793)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 閉形式表示 / 有限予測係数 / 多変量ARMA過程 / ブートストラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、多変量 ARMA (Auto-Regressive Moving-Average, 自己回帰移動平均) 過程の有限予測係数に対する閉形式表示に関する論文を完成させた。ここで閉形式表示とは、与えられた有限個の定数から、加減乗除等のよく知られた操作の有限回により得られる表示のことである。この多変量 ARMA 過程の有限予測係数に対する閉形式表示は、予測データの個数によらないサイズを持ついくつかの明示的に与えられた行列を組み合わせた形をしている。その証明においては、2つの行列値外部関数の極の間の対応に関する研究代表者のある発見が重要な役割を果たす。大雑把に言って、それらの2つの行列値外部関数のうちの1つは元の ARMA 過程に対応するのに対し、もう1つの行列値外部関数は元の ARMA 過程を時間反転させて得られる別の ARMA 過程に対応する。この極の間の対応は、2変量以上の過程を考えるときに初めて問題となる事柄である。ARMA 過程の有限予測係数に対する閉形式表示は、有限予測係数を計算する超高速(superfast) なアルゴリズムを与える。また、その閉形式表示は、有限予測係数の漸近挙動を調べる強力な道具ともなる。後者に関して、研究代表者は、有限予測係数に対する閉形式表示を用いて、有限予測係数からなるある和の漸近挙動を決定した。この和は、ARモデルのあてはめの一貫性を示す際や、ARふるいブートストラップ等に現れる。この和はBaxter の不等式とよばれるものにより上からの評価できることは知られていたが、研究代表者の結果は、その和の完全な漸近挙動を決定したものである。さらに、本研究課題の別の成果として、無限次のMA表現で記述される多変量定常過に対するMAブートストラップに関するものがある (研究代表者、藤本智博・清水亮両氏で共著論文を準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、研究代表者の井上等により発展させられてきた予測理論的手法を、井上・笠原・Pourahmadiの最近の一連の研究により導入された新しいテクニックによりさらに発展させようというものである。この方向の研究として、多次元 ARMA 過程の有限予測係数の閉形式表示と、その有限予測係数の和の漸近挙動への応用という成果が得られた。また、1変量および多変量の定常時系列に対する MA (移動平均) ブートストラップの理論的および計算機シミュレーションによる数値実験的成果も得られているが、これも井上・笠原・Pourahmadiにより導入された新しいテクニックを応用することにより可能となったものである。このように当初の計画以上の成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
上の進捗状況で述べた「1変量および多変量の定常時系列に対する MA ブートストラップの理論的および計算機シミュレーションによる数値実験の成果」を、論文として完成させる作業をさらに着実に進めていく。また、連続時間の確率過程に対する研究として、「1変量および多変量 ARMA 伊藤過程の新生過程による閉形式表示とその応用」に関する作業をさらに進めていく。これも研究代表者たちによる新しい予測理論的テクニックの応用である。具体的には、必要な理論整備および計算機シミュレーションを行ない、論文として完成させる作業を進める。
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Causes of Carryover |
「1変量および多変量 ARMA 伊藤過程の新生過程による閉形式表示とその応用」に関する計算機シミュレーションを効果的に行うためには、高性能 GPU を搭載し並列計算を高速で行える PC の導入が不可欠であると判断したので、2018年度の予算の一部を残し次年度の予算と合わせてそのような PC を購入することにした。
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