2019 Fiscal Year Research-status Report
予測理論的新手法による動的確率従属性解析とそのファイナンスへの応用
Project/Area Number |
17K05302
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井上 昭彦 広島大学, 理学研究科, 教授 (50168431)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠原 雪夫 北海道大学, 理学研究院, 研究院研究員 (10399793)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 多変量ARMA過程 / テプリッツ系 / 閉形式表示 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、[Journal of Multivariate Analysis, Volume 176, March 2020]で発表した論文で、多変量 ARMA (Auto-Regressive Moving-Average, 自己回帰移動平均) 過程の有限予測係数に対する閉形式表示を示した。ここで閉形式表示とは、与えられた有限個の定数から、加減乗除等のよく知られた操作の有限回により得られる表示のことである。この閉形式表示の著しい点は、有限予測係数を線形時間 O(n) で計算するアルゴリズムとなっていることである。有限予測係数は、特殊なテプリッツ系の解となっている。一般に、テプリッツ系の解を求めるアルゴリズムは、O(n^2) のとき高速、それより速いとき超高速 (super-fast) とよばれる。有名な Durbin-Levinson アルゴリズムは、テプリッツ系に対するO(n^2) の高速アルゴリズムである。線形時間 O(n) は最良の速さであるので、究極の超高速であるということができる。研究代表者は、2019年度に、この結果を、多変量 ARMA 過程に対する一般のテプリッツ系に拡張する研究を行い、基本的な結果を得ることができた。すなわち、多変量 ARMA 過程に対する一般のテプリッツ系の解に対し、上記と類似の閉形式表示を見出した。この閉形式表示は、アルゴリズムと見るとき、O(n) の超高速アルゴリズムとなっている。この成果については、2019年12月の確率論シンポジウムで講演し、またその内容を論文にまとめる作業を続けている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、研究代表者の井上等により発展させられてきた予測理論における表現定理とその応用に関する理論を、さらに発展させようというものである。この方向の研究として、2018年度までにすでに得られていた多変量 ARMA 過程の有限予測係数の閉形式表示という成果を、更にはるかに一般化して、多変量 ARMA 過程の一般のテプリッツ系に拡張するという予期せぬ成果が得られた。このように、本研究は、当初の計画以上の成果が得られている。
|
Strategy for Future Research Activity |
多変量 ARMA 過程に対する一般のテプリッツ系の解に対する超高速アルゴリズムという理論的な結果が得られたので、これを最終的な論文として発表するために必要となる以下の2つの作業を行う:(1) 論文化する際に必要となる細かい理論の整備、(2) 結果をMATLABで実装し、シミュレーションを行うこと。
|
Causes of Carryover |
「テプリッツ系の解に対する閉形式」に関する論文執筆を続けているが、完成までにまだしばらく時間がかかりそうである。その完成のためには計算機シミュレーションを必要に応じて行う必要があるが、その際に必要となるPC関連備品等を購入するために、2019年度の予算の一部を残し、2020年度に使用することにした。
|