2018 Fiscal Year Research-status Report
シュレディンガー形式と重み付きマルコフ過程の確率解析
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17K05304
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
金 大弘 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (50336202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑江 一洋 福岡大学, 理学部, 教授 (80243814)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Feynman-Kac functionals / Lp independence / scattering length / random environment |
Outline of Annual Research Achievements |
一般化されたファインマン・カッツ汎関数を重みとしてもつ確率過程の様々な確率論的主張およびその周辺の応用問題に対して、ディリクレ形式論やシュレディンガー形式論といった関数解析的取り組みを通じて以下の研究を行った。 (1) 米国ワシントン大学のZ.-Q. Chen氏、福岡大学の桑江一洋氏と共同で、零エネルギーをもつ非局所型ファインマン・カッツ半群におけるLp-独立性に対して、既存の結果をすべて含む最も一般的な結果を得た。研究成果は数学雑誌 Mathematische Annalen に掲載予定。 (2) 非局所型ファインマン・カッツ汎関数をポテンシャルとしてもつシュレディンガー作用素の散乱長を定式化し、散乱長における準古典的極限問題の解決とそのシュレディンガー作用素が離散スペクトルをもつための解析的特徴付けを与えた。研究成果は数学雑誌 Mathematische Nachrichlten に掲載予定。 (3) 一般化されたファインマン・カッツ汎関数のゲージ理論を利用してシュレディンガー作用素の熱核の安定性における最も一般的な枠組みでの判定条件、並びに同値条件などを究明した。研究成果は現在審査中。 (4) 多次元 Broxの拡散過程と1次元ブラウン運動の直積過程の再帰性に関する結果を得た。臨界的な場合である多次元 Broxの拡散過程と2次元ブラウン運動の直積過程についても同様に再帰的になると予想しているが現段階では満足な証明に至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ディリクレ形式論やシュレディンガー形式論といった関数解析的取り組みを駆使し、これまでの研究成果を土台にして進行させた関連周辺応用問題に関する一連の研究は、一般化された非局所型ファインマン・カッツ汎関数の重みをもつ対称マルコフ過程が示す特異的な性質の確率論的理解を明確にしたと考えられる。以上のことで、一般化ファインマン・カッツ汎関数を重みとしてもつ確率過程に対する新しくより見通しの良い解析学的理論展開を構築する当初の研究目標は一定部分達成できたように思える。また、本年度の研究を進行させていくうちに完全に解決できた問題として、飛躍型加法汎関数を摂動としてもつシュレディンガー作用素の離散スペクトル性を散乱長を用いて特徴付けることができたことは、これからの関連問題を取り組む際の新しい突破口となるのではと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を土台にして、一般化されたファインマン・カッツ汎関数を摂動としてもつシュレディンガー作用素における様々な解析とその結果がもたらす確率論的立場からの意味について注意深く研究を進行していきたい。特に、以下に示す問題を明らかに究明したいと考えている。 (1) シュレディンガー作用素に関する離散スペクトル問題と熱核の評価。 (2) 一般化ファインマン・カッツ汎関数を摂動としてもつシュレディンガー形式論とマルコフ過程。 (3) 多次元ランダム環境をもつ直積確率過程における大域的性質として、臨界的な場合である多次元Broxの拡散過程と2次元ブラウン運動の直積過程についての再帰性の証明。
なお、これらの問題については既に一部分結果を得ている。
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Research Products
(4 results)