2017 Fiscal Year Research-status Report
Nonlinear microlocal analysis for the Boltzmann equation
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17K05318
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森本 芳則 京都大学, 人間・環境学研究科, 名誉教授 (30115646)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 扇丈 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (50273165)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ボルツマン方程式 / 解の平滑効果 / 時間大域解 / 線形化作用素 / 多項式減衰の摂動解 |
Outline of Annual Research Achievements |
切断近似をしないボルツマン方程式に対する初期値問題の解の存在と解の平滑化について、解が空間一様な(空間変数によらない)場合と、非一様な場合について分けて考察した。 (1) 空間一様な場合には、Debye・湯川型の斥力ポテンシャルから導出されるモデル方程式に対して、確率測度解の枠組みで解の平滑効果を示すことができた。空間一様な切断近似をしないボルツマン方程式の解の平滑化は、前年度までに、逆べき相互作用斥力ポテンシャルから導出されるモデルについて解決していたが、この結果により、ほぼすべての場合について初期値が単独ディラックマスでなければ、解は直ちに無限回微分可能な関数になることが明らかとなった。 (2)空間非一様な場合については、大域的平衡解(時間と空間に依存しないGauss関数)の周りでの速度に関する多項式オーダー減衰解が、時間大域的に存在することが明らかにできた。衝突項の衝突断面積がハードポテンシャルと呼ばれる、粒子間相対速度の絶対値の正べきに依存する場合で、更に角度因子の特異性が弱い場合のみの結果ではあるが、大域的平衡解の摂動解は従来、大域的平衡解の平方根以上の速度変数に関する減衰を仮定してしか得られておらず、今回得られた結果は摂動解の範囲を画期的に広げたものといえる。証明では、ボルツマン方程式の線形化作用素を速度に関する多項式オーダーの尺度で定義し、その線形化作用素の初期値問題の解が、速度変数と空間変数の両方について平滑化することが鍵となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
切断近似をしないボルツマン方程式に対して、空間一様な場合は初期値問題の解の存在とその平滑化が、ほぼすべての場合で明らかにできた。空間非一様な場合については、大域的平衡解(時間と空間に依存しないGauss関数)の周りでの摂動解の範囲を画期的に広げることができ、そこで得られた解析方法は、従来の大域的平衡解の平方根以上の速度変数に関する減衰を仮定する方法と本質的に異なるものであるから。
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Strategy for Future Research Activity |
海外共同研究者を国内に招へいするのは、支給旅費の20パーセントが税金で差し引かれることもあり、躊躇せざるを得ない。科研費の効率的な使用として、その代わりに共同研究者との討論のため、フランス、香港、カナダ等の海外に積極的に渡航する予定である。
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Causes of Carryover |
外国人共同研究者の招へい旅費として使用する予定でいたが、今年度から支給旅費から約20パーセントの税金が差し引かれることになり、招へいを見合わせることとなった。
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