2018 Fiscal Year Research-status Report
Mathematical analysis of fluid dynamics in various singular limits
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17K05320
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前川 泰則 京都大学, 理学研究科, 准教授 (70507954)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Navier-Stokes方程式 / Prandtl境界層解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
(定常Navier-Stokes 方程式におけるshear型境界層周りのPrandtl境界層展開の研究) 非自明な境界をもつ領域におけるNavier-Stokes 流の非粘性極限での挙動は流体力学における古典的な問題である一方,境界層の潜在的な不安定性により数学的には極めて難しい問題として知られている.非定常流においてはTollmien-Schlichting不安定性による微分損失により,一般にSobolev空間の枠組みでのPrandtl境界層展開は期待できないことが近年明らかにされた.一方,Tollmien-Schlichting不安定性は時間変数の周波数に依存する非定常問題特有の不安定性であり,定常問題においてPrandtl境界層展開が正当化できるか否かは大きな未解決問題であった.本研究では,自然なソボレフ空間の枠組みのもと,逆流の無いshear flow 周りにおいて定常流に対するPradntl 境界層漸近展開を数学的に正当化した.これはPrandtlにより1904年に提示された定常流に対する境界層展開を非自明な問題設定のもとで初めて数学的に正当化した結果である.証明の鍵はOrr-Sommerfeld方程式と呼ばれる4 階の常微分方程式の境界値問題の可解性を示すことである.非定常問題の際に用いられたsplitting methodであるRayleigh-Airy iterationと呼ばれる手法を,定常問題に適用できるように独自の改良を加え,さらに境界層解析の技法を組み合わせることで,粘性係数によらない可解性と解の評価を示すことに成功した. (円柱周りの定常Oseen流の安定性の研究) 円柱周りの流れを記述する2次元定常Oseen流の安定性はReynolds数が小さい場合でも数学的には大きな未解決問題であったが,その小さな流れの枠組みで漸近安定性を示すことに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
定常Navier-Stokes方程式に対するPrandtl境界層展開は当該分野における大きな未解決問題であったが,shear flow周りにおいてこれを数学的に正当化することができた.これは当初の計画では予想していなかった大きな成果である.
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Strategy for Future Research Activity |
Navier-Stokes方程式の非粘性極限問題について,主流がshear flowではなく一般の流れの場合,GevreyクラスでのPrandtl境界層展開の数学的正当化は大きな未解決問題である.Shear flowの場合の解析手法を拡張することにより,この問題の解決を試みる.また,円柱周りの流れを記述する流体方程式の数学解析に取り組む.本研究課題の研究成果として,定2次元常Oseen流の2次元擾乱に対する漸近安定性が示された.この安定性の結果を擾乱が3次元流の場合や関連する自由境界問題などに応用・拡張していく.
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Causes of Carryover |
研究代表者の大学用務等の事情により予定よりも国内出張の数が少なくなり,次年度使用額が生じた.次年度に図書の購入及び国内研究者の招聘費用や出張旅費として使用する.
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Research Products
(17 results)